cloudchair (1st album) 解説
- 2006-10-23 (月)
- カテゴリー: Commentary
僕のソロユニットcloudchairの1stアルバム。
かねてより、自宅で制作したデモ音源について、僕にごく近しい方々から高評価をいただいていた事があり、それに気をよくしたのがひとつのきっかけだった。
僕自身も、Vincent GalloやJohn Frusciante (ex-Red Hot Chili Peppers)等の宅録による私的な作品にシンパシーを感じており、自身のそういう表現意欲を形にしてみたいと強く想うようになっていた。
ビクターとのアーティスト契約を解消し、Super Soul Sonicsを休止して新たなやり方で音楽へ向かっていこうとしていた頃。予定が白紙になった時、僕はすぐにこの作品の制作を始めた。
小規模ながら自宅に録音環境を整え、演奏は全て僕一人で行った。当時の僕の生活そのものがこのアルバムである。そしてその生活はとても穏やかなものだった。このアルバムを聴いてくれた方々から「木漏れ日を浴びているような」「子守唄のような」作品だという言葉をいただいた。実際そんな気持ちで日々を過ごしていたし、他人の目に映る僕もまた、そのような人間だったのだろうと想う。
この作品の制作では、僕が僕以上の存在として映ることのないように努めた。音色も温もりを感じさせるものを集め、広がりを持ちすぎないように積み重ねた。
そして僕は、歌いたかったというよりも、自分のシンプルなメロディをシンプルなままに伝える為に、自分で詞を書き歌う事にした。上手く歌うつもりもなかったし、話すのと同じような声で歌った。大声で不特定多数に訴えるより、腰を落ち着けて一人に話しかけるような歌を作りたかったのだった。
曲自体は既に書かれていたものもあり、M2「風のうた」は石田幾多郎とのユニット”TURB”としてライブで演奏した事もあったし、M8「Ghosts」に至っては(多分)1993年頃、Guniw Toolsでデビュー以前に作った小曲である。実は「Ghosts」とは、同名のJapanの名曲をカヴァーする際に僕が作曲したイントロダクションであったのだが、約10年振りに思い出して聴いてみたら中々気に入ったので、そのイントロのみを再録したのだった。「Guniw Toolsを想起させる」と言われた事があるが、このような理由のせいもあるかも知れない。
M1「Wales Bridge」は、ある夜のこと、眠る寸前にメロディが浮かび、翌朝もそれがずっと残っていた事から始まり、僅か2行の詞を加えて完成となった曲。その詞もただ頭に浮かんだものを書いただけだし、タイトルなどもどこか特定の場所ではない。無意識の産物である。そういう曲は自分でも特に気に入る場合が多く、この曲などアルバムの最後にも別バージョンで収録したくらいである。
「風のうた」の詞も、僕がある時ある場所で感じた事をそのまま曲にのせたものである。なんとなく僕らしいかな、と思ったのでブログにも掲載してみた。
とは言え、僕はやはり詞を書くより歌を歌うより、音を作る方が得意なのである。
ギターのみのM5「4585」のようなインストこそ僕らしいのかな、なんて思い直してみたりもする。
M9「Days In Blue」もインストだが、何がそんなに悲しいのってくらいにセンチメンタルな曲である。音を色に例えるとすればこの曲はセピア色で、先程名を挙げたようにヴィンセント・ギャロやジョン・フルシアンテがお好きな方には気に入っていただけるのではないかと思う。
インディーでの制作、流通、宣伝、そして僕自身についてなど様々な問題があったのだが、このアルバムを入手して聴いてくれた方々からいただいたあたたかい言葉を思い出すと、そんな苦労も吹っ飛ぶ。
必ず、もっと良いものを作り一人でも多くの人に聴いてもらいたいと、改めて想うのである。
そして。
僕に賛同してくれて、協力を惜しまず最後まで手を貸してくれたミキサー杉山勇司氏、
僕の世界観を丁寧にイメージ化して、デザイン全般を担当してくれたミヤベアツシ氏、
この二人に対し改めてSPECIAL THANKSと記しておきたい。
ありがとう、僕一人じゃ決して出来なかったよ。
愛を込めて。
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