【ダンブル系ペダル・レビュー】One Control | Golden Acorn OverDrive Special
- 2016-12-30 (金)
ニュアンスを活かす広いダイナミックレンジ
One Controlのダンブル系オーバードライブGolden Acorn OverDrive Special (以下GAOD)をレビューします。
まずは、既に好評をいただいているデモ動画を是非ご覧ください。
One Control | Golden Acorn OverDrive Special [Designed by BJF]
Credit
- Music / Movie / Cast
- Jake Cloudchair
- Thanks to
- Fujigen
- OKADA International Inc.
- Garret Works
キングオブカスタムAIAB、One Controlに登場。
顧客の求めるサウンドに合わせ、フルオーダーで制作されるギターアンプ。中でも圧倒的な伝説と共に語られるアンプがあります。
ダンブル。
“Overdrive Special”“Steel String Singer”などモデル名はあるものの、全てがカスタムメイド。1台1台音が違うのはもちろん、そもそもその中の1台にでもギターをプラグインしたことのあるプレイヤーはごく限られています。
それ故、“ダンブルサウンド”として語られるのはその使用者である著名アーティストのサウンドであることが多いものです。その多くがブルースプレイヤーであることから、“ダンブル系”と呼ばれるサウンドはハイレスポンスでローミッドが重たい音色。それはたしかにブルースやフュージョンのリードとしては優秀ですが、意外と使いにくい音でもあります。
本物のダンブルを弾く機会のあるプレイヤーは限られていますが、オーナー以上に多くのダンブルに触れ、本物のダンブルを知る者が居ます。チューブアンプが定期的なリペアを必要とすることを考えれば、その答えは言うまでもないでしょう。まして、極上のヴィンテージフェンダーアンプをベースとして構築されたダンブルアンプであればなおさらです。One Control Golden Acorn OverDrive Specialの開発者、BJFは、ダンブルアンプを知り尽くした“親友”と共に、何台ものダンブルアンプを弾いたと語ります。ダンブルの真髄は“アーティストのためのカスタムメイド”であり、真の意味での“ダンブルサウンド”は存在しない。それがBJFの見解です。
一方、どのダンブルアンプにも共通する特徴、特性は確かにある、BJFは続けます。最大の特徴はダイナミックレンジであると。
Golden Acorn OverDrive Specialは、ダンブルに共通する特徴を捉えた、ダンブルアンプ・イン・ア・ボックスです。それは奇しくも、世界を驚かせたブラックフェイス・ペダル、Sonic Blue Twangerに近い構造で作られています。“本物”の多くがヴィンテージブラックフェイスをベースとしているように。透き通るクリーンからヘヴィゲインまでをタッチだけでコントロールできる。しかも、強いアタックで歪んだ音が他の音をかき消してしまうこともありません。 つまり、和音の分離が良く、それでいて均一でまとまった音になります。音がバラバラにならず、それでいて濁らない。ゲインレンジは広いですが、常にクリアな響きを作ります。
Golden Acorn OverDrive SpecialのRATIOノブは、基本となるゲインコントロールです。ハムバッカーならこのノブを11時、シングルコイルなら12~1時付近をスタートとして音を作り始めてみてください。
Golden Acorn OverDrive Special(GAOD)は、私がこれまで弾いた多くのダンブルアンプの特徴を備えている。GAODを使う際は、このダイナミックレンジを最大限に活かすよう、出来るだけペダルチェインの先頭、特にコンプレッサーより前に設置することを提案したい。
ペダルボードの中でダイナミクスレンジを司る“スペード”となるだろう。
───Bjorn Juhl
解説
デモの内容について解説していきます。
使用機材リスト
- ギター
- FGN NST200
- FGN EFL-FM (with DeMont PU)
- ギター・アンプ
- Koch Studiotone 40XL Head
- ベース
- FGN NJB200, One Control Crimson Red Bass Preamp & Lemon Yellow Compressor
- Ratio
- 10
- Bright
- 2
- Volume
- 12
- Ratio
- 2
- Bright
- 12
- Volume
- 10
- Ratio
- 12
- Bright
- 12
- Volume
- 12
- Ratio
- 12
- Bright
- 7
- Volume
- 12
- Ratio
- 1
- Bright
- 5
- Volume
- 12
- Ratio
- 8.5
- Bright
- 10
- Volume
- 12
- Ratio
- 11
- Bright
- 4
- Volume
- 3
- Ratio
- 5
- Bright
- 3
- Volume
- 12
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Crunch Rhythm
ストラトのネック・ピックアップを使い、Ratioを抑えめにしたクランチ・トーンです。中低域が豊かで粘りのある音色です。
ちょっと地味な雰囲気に感じるかも知れませんが、ジョン・メイヤー(John Mayer)が使うような太いリズム・トーンを狙ってみました。
Fat Drive
ブリッジ・ハムバッカーでリードを弾きました。動画の冒頭もこの設定で弾いています。
太さと共に明るさも備えるリード・トーンです。
ダンブル系のペダルといえばタッチ・センシティブなのが特徴です。このペダルも正にその特徴、タッチをそのまま増幅するような反応性を持っています。
Basic Setting
ストラトのブリッジ・ピックアップを使い、同じフレーズを繰り返し弾いて音色の幅、特にBrightノブの効き方をチェックしました。
まずは全てのノブを12時にした設定。中低域が張り出した太くあたたかいトーンです。歪みの強さはクランチ程度で、チューブアンプ的でナチュラルな音質です。
Dark Tone
Brightノブはその名の通り高域の出方を調整します。一般的なトーン・ノブに比べると効き方は緩やかです。
絞り切ると、シングルコイルの耳に痛い帯域を程良く抑えるような効果が得られます。
この少しダークな質感はBJFEに通ずる印象を受けました。
Bright Tone
次にBrightを最大にしました。高域のざらつきが際立ち派手な質感になります。
この高域寄りの音色を強調する為にRatioも少し上げてみました。
明るいトーンですが、うるさすぎない感触だと思います。
Warm Tone
ほぼクリーンな状態までゲインを下げた設定です。Brightを少し絞ってあたたかいトーンにしてみました。
アタックに柔らかいコンプ感ががあるのですが、TS系とは少し異なりよりオープンな質感です。このニュアンスがダンブル系らしさと言えるかも知れません。
指弾きのニュアンスが良く出ます。
Bluesy Drive
上記と同じくストラトのネック・ピックアップを使って弾きました。
少しゲインを上げてクランチに、そしてBrightも上げたので結構印象が変わるのを感じていただけると思います。
細かいタッチが自然に増幅されて、生々しい音色に感じます。
Hot Drive
Ratioを最大にしました。割と深く歪みますが、コードの分離感を損なわない解像度を持っています。
ここまで歪ませてもノイズが少ないのが印象的でした。
ギター・ボリュームへの反応性はかなり高いです。ここでは冒頭でボリュームを3まで下げていますが、ほぼクリーン・トーン、しかもこもる事も無くナチュラルなトーンになります。
ギター・ボリュームを上げれば伸びやかなリード向きのトーンになります。このペダルのダイナミック・レンジを最も活かせる、守備範囲の広い設定と言えるかも知れません。
ちなみにこのパートの後ろで鳴っているモジュレーションの効いたギターにもGAODがかかっています。
そちらにはOne ControlのLittle Copper Chorusでレズリー風のモジュレーションを、Prussian Blue Reverbで奥行き感を足しています。
総評
ダンブル系と呼ばれるエフェクターも増えてきました。
ただ何ぶん本物のダンブルが入手困難な上、個体毎に設計が異なると言われるアンプなのでTS系やプレキシ系などと比べるとその定義は少し曖昧です。
タッチ・レスポンスに優れている・抜けが良い・ナチュラルで太い音、というのが共通点に挙げられるでしょう。
私もダンブル系ペダルをいくつか弾きましたが大体上記の特徴を持っていました。Kemperで実際にダンブルをプロファイリングしたリグも弾いた事がありますが、やはり共通する特性を感じました。
個人的にはダンブルといえばロベン・フォード(Robben Ford)のトーンを思い浮かべます。
何と言ってもタッチのニュアンスを活かした表情豊かで抜けの良い音色が魅力です。
実は私がダンブル系ペダルをチェックする時の基準のひとつが「ロベンっぽく弾きたくなるかどうか」なのです。
要は「ニュアンスを活かして気持ちよく弾ける」という事ですね。
今回紹介したGAODは上記の特徴を持ち、私の基準も満たしたペダルです。
細かいニュアンスが良く抜けて聴こえてくるので、タッチで表情をつけるのが楽しくなります。
その分ミスタッチもはっきり聴こえるので、このペダルを使うとタッチに気を遣うようになるかも…?
ダンブル系らしさは勿論持っていますし、その肩書きにこだわらずダイナミック・レンジの広いブースター/オーバードライブとしても優秀な1台です。