旧サイトより再掲:愛の惑星 / 櫻井敦司

  • 2015-10-09 (金)
  • カテゴリー: blog

愛の惑星
Amazon: 愛の惑星 / 櫻井敦司

現在THE MORTALで活動をともにしている櫻井敦司さんの完全限定生産BOX“愛の惑星 -Collector’s Box-“が先日リリースされました。

2004~2005年の『愛の惑星』プロジェクトで発表された初商品化音源を含む全楽曲およびNHKホールにおけるライブ音源をリマスタリングして高品位ディスクSHM-CD3枚に収録! さらにソロライブ映像『-EXPLOSION- 愛の惑星Live 2004』と全ミュージックビデオを高画質Blu-rayディスク化!
Amazonより引用

という濃い内容のもので、私もたっぷりと参加させていただきました。

実は私、2006年に自分のウェブサイトを立ち上げた際に、“愛の惑星”及び“-EXPLOSION-愛の惑星Live2004”の紹介ページを公開していました。
そして数年後にブログなどを現在の形にリニューアルするにあたって、前出のページも作り直そうと思って一旦削除したのです。
そのまま長らく放置してしまっていたのですが、この機会にその文章を再掲したいと思います。

9年前に勢いで書いた文章を今読み返すと非常に気恥ずかしいものがありますが、それも含めて当時の記録として楽しんでいただけたら幸いです。
それではどうぞ。


愛の惑星 / 櫻井敦司

http://www.cloudchair.net/works/others/ai-no-wakusei-atsushi-sakurai/

ある日のこと、私がプロデビュー以来お世話になっているディレクターの田中淳一氏から電話がかかってきた。
BUCK-TICK櫻井敦司のソロを制作中だが、一曲提供しないか」
との申し入れにふたつ返事で承諾。ちなみに他にはどんな方が参加されているのか尋ねると、
佐藤タイジ、岡村靖幸、土屋昌巳、Foe、Cube Juice、Wayne Hussay (Mission)、Robin Guthrie (Cocteau Twins) …(敬称略)
「なんのお祭りですか?」と聞いてしまった程の豪華かつ意外な顔触れに興奮するとともに、「僕でいいんですか?」と再度聞いてしまった程の当惑を感じたのであるが、ここは冷静かつ前向きにいかねばと心を落ち着かせてから、
「ところで、どんな曲をお望みでしょうか?」と尋ねると
David Bowie“Starman”とか“Space Oddity”みたいな…幻想的かつポップな感じで」と言われ
「はいはい、僕の好きな感じです、わっかりましたぁ」と返して電話を切ったのであった。
楽勝々々、ってふんふん鼻歌なんぞ鳴らしつつ「スターマンね、はいはいっと」なんて独り呟いたところでハッと我に返る。
「…それって、すごい名曲を作れって事じゃん…」

楽勝どころか負け戦に挑むような心持ちで作曲に望んだ甲斐あって、なんとか気に入っていただけた曲が出来た。
エンジニア杉山勇司氏とのスタジオやネットでの度重なるやり取りを通じて、なかなかに繊細なトラックが出来たところで歌録りの日がやって来た。

久々にお会いした櫻井さんは登場時からオーラ全開で、こちらがその雰囲気に酔ってしまいそうになったところで一言呟いた。
「素敵な曲をありがとう」
きゃーっっもう好きにしてぇっっ、という抱きつきたい衝動をなんとか抑えつつ、ゆるやかに歌入れは始まったのであった。

この曲に書かれた詞を初めて読む。タイトルは「猫」とある。軽い衝撃。
歌入れの前にワインを飲み始める人は初めて見たが、その様がこれ程似合う人もいまい。
その薫り立つような色気を持つ歌に聴き惚れているうち実にスムーズに歌入れは終わった。
流石や。これがプロのロッカーや。と、溜息混じりに歌の余韻に浸っていたところへディレクター田中氏からの提案。
「イントロで、タイトルを呟いてみてくれる?」
僕と杉山さんの頭上にはでっかい「?」が浮かび、はて何のことか知ら、えーとどういう意味でござるのかなもし、なんて当惑している僕等をよそに、櫻井さんはニヤリと不敵な笑みを浮かべ「わかりました」と一言残して再びブースへ入っていったのである。

田中・櫻井両氏以外の面々は、一体どういうことになるのかと固唾をのんでブースに両目を、スピーカーに両耳を集中させた。
イントロが鳴る… 抜群の、ここ以外ありえないというタイミングで、かつ色気たっぷりの低い声で彼は一言こう囁いた。

「……ねこ。」

きゃーっっもう好きにしてぇっっ!


-EXPLOSION-愛の惑星Live2004 / 櫻井敦司

>-EXPLOSION- 愛の惑星 Live 2004 / 櫻井敦司

http://www.cloudchair.net/works/others/explosion-live-2004-atsushi-sakurai/

三代堅(ex M-AGE)、松田知大(Wrench)、阿部耕作(The Collectors)、藤井麻輝(睡蓮)、佐藤タイジ(Theatre Brook)、Cube Juice、そして僕、といった面子をバックに従えた櫻井敦司ソロライブのDVD。

ドラムの阿部さんとは、私の前バンドSUPER SOUL SONICSや、ちょうどこのライブ直前にhitomiのツアーに一緒に参加していた事もあってリラックス出来る間柄だったのだが、他の皆様とは交流が浅いか又は初対面だった訳で、まずは懇親会でもいかがかしら、なんて提案が出されたところ、待ってましたとばかりに我々は酒宴に望んだのである。
その宴は朝にまで及び、平日深夜のバーで他に客がいないのをいい事に、大音量でCDをかけ踊り狂った挙句に汗まみれでTシャツの色が変わってる、などという事態になっていた。
以降、リハーサルの後でもそのような宴が繰り広げ繰り返されたおかげもあって、皆様とはすっかりやんわり打ち解ける事が出来たのであった。

演奏曲目の殆どがそれぞれ別の人々によって作られていたわけだが、それを一つのバンドで一本のライブにまとめ上げる事が出来たのは、勿論バンドメンバー各々の実力・努力もさる事ながら、やはり櫻井敦司という歌手の持つ力のおかげであろう。
NHKホールでの舞台にしては簡素にさえ見える装飾を抑えた美術であったが、そこをパフォーマンスで自分の色に染め上げ、濃厚な世界観を現出せしめた彼とは、真に稀有の存在であると言わざるをえまい。


このライブ当日、前日の打ち上げで飲み過ぎ二日酔いで楽屋のソファーに突っ伏した本番前の僕に、そっとタオルケットをかけてくれた櫻井さん。
あの時を思い返す度に泣きそうになります。色んな意味で。


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