手袋でほろり。
- 2007-03-29 (木)
- カテゴリー: Diary
先日、ベーシスト・佐藤研二さんと数年ぶりに再会する機会があった。(それも、何故か札幌にて)
佐藤さんにはSUPER SOUL SONICSにサポートメンバーとして長らく参加してもらっていて、色々な場面で色々とお世話になった方である。
佐藤研二といえば、まぁご存知の方には言うまでもないのだが
その音・演奏・機材・表情などなどどれをとっても、個性的という言葉で済ませるのがはばかられる程に際立った個性を持つミュージシャンである。
さらに言うならば、白い手袋をはめて演奏する事でもよく知られている。
ライブは勿論のこと、リハーサルやレコーディングの場面でも、手袋は常に着用していた。(ちなみに休憩中は脱いでいた)
ある日、ライブ会場でリハーサルを始めようとしていた時のこと。
顔面蒼白になって「あ。」と絶句したきりピタッと停止した佐藤さんを見た僕は、
軽い冗談のつもりでへらへら笑いながら「なになに、手袋でも忘れたんですか?へらへら」なんて声をかけたのだが
ご当人は全く冗談抜きの100%真面目な顔でこう返してきたのだ。
「……忘れた」
その、財布でも落としてしまったかの如き弱々しい表情を見て僕は、手袋がいかほどに重要なものであるかを知ったのであった。
(結局スタッフが買ってきたので事無きを得た)
しかし。
こないだ久々に拝見した佐藤さんの左手には、なんと手袋がなかったのである。
本人曰く「自分でも、手袋を外せる日が来るなんて思ってなかった」
「ある時、急に外したくてたまらなくなったんだ」
そう語る彼の顔は、心なしか少し寂しさを感じさせながらも、なんだか晴れ晴れとして見えた。
その時、ふと僕の心に浮かんだのは「卒業」という言葉であった。
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