透明な、毛。

  • 2007-01-19 (金)
  • カテゴリー: Diary
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透明な毛。と読んでピンッとくる方がどれ程いるだろうか。
身体の意外な所から一本だけ生えてきて、透明ゆえに気付かぬうちにぐんぐん伸びてきて、
発見した頃には既に10cm近い長さになっているという、合成繊維の糸くずにも似た、ナゾのアレである。
ここまで読んでもまだわからない、という方には「ほら、コレでんがな」と動画サンプルでも見せたい所だが、
はて何と検索すればいいのやら皆目見当がつきかねますゆえ、
まぁそういうもんがあるんやね、くらいに思って読み進めていただけると幸いです。

僕の友人にも透明な毛が生えてきた例がいくつかあった。
生えてきた部位は肩、首、腕などで、いずれも長さ約10cm程。
不思議なのは、いずれの友人もその毛を抜こうとはせず、寧ろ大事に扱っていた事である。
中には、抜けた時に願いが叶う。などと勝手なまじないをかける者までいた。

頬から生えてきたという例もある。
それまでは気付かなかったのだが、ある天気の良い昼下がりに僕はそれを見てしまった。
頬から伸びた10cm超の毛が陽光を浴びて輝き、風に吹かれてそよそよそよ~となびいている様を。
ちょっと異様である事に当人も気付いたようで、さすがにそれは抜いてしまった。

かくいう僕も、先頃胸から伸びる透明な毛を発見した。
不思議なもので、己の身体に生えてみるとなぜか抜く気にならない。
それどころか、毎日風呂あがりに確認して安心したり、
順調に伸びている毛を見て子供の成長を見るが如くに喜んだり、
あろう事かちょっと願掛けしている自分に気付いて驚いたりもした。
なんとも不思議な、毛マジックである。

しかし先日の風呂あがりの事。
ふと胸元に目をやると、ない。
昨日まで白銀に輝いていたあの毛が、ない。
抜けてしまって、ない。

なんだろう。この、なんとも言えぬさみしさ。
旅先の何処かに読みかけの本を忘れてきてしまったような、
傷を負った小鳥の世話をしているうちに愛情が湧いてくるうちに怪我はすっかり良くなってもう別れの時。
再び広い空へ旅立っていく様を見守るような、ちょっとせつない気分。
そっと手を振りながら。ららら。

せめて何かいい事でも起こらないかしら、なんて思っていたら
しばらくぶりに袖を通した外套のポケットに千円札を発見。
イェア、ラッキ♪と喜んだのも束の間、透明な毛のご利益のスケールの小ささに思わず、
フッ。と鼻で笑ってしまったのであった。
この千円で宝くじでも買ってみるか。なんて思ってまたもや、フッ。

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