【動画&レビュー】”ART” ヴィンテージの銘機を基にしたディストーション
- 2018-12-27 (木)
ヴィンテージの銘機「RAT」を現代的にアレンジ
2018年に大阪で発足したブランド“ignition/of/mass-products//”からの第1弾ペダル「ART」を紹介します。
- ペダルショップCULT:商品ページ
- https://www.cult-pedals.com/products/art
このARTはヴィンテージの銘機「RAT」の芳醇なサウンドを蘇らせ、更に現代的なアレンジを加えたディストーション・ペダルです。
その魅力を紹介するべく、内容の濃い長めの動画を制作しました。
私の動画では珍しく一人で語るパートもあります。是非ご覧ください。
ART [Distortion] ignition/of/mass-products//
Credit
使用機材リスト
- ギター
- FGN (Fujigen) NST200
- FGN NSG100
- ギター・アンプ
- Fender Twin Reverb :(Mic : Shure SM57)
解説
それではデモ動画での設定・音色について解説します。
各ノブの詳細については下記”Controls”の項をご参照ください。
今回はスタジオ常設アンプFender Twin ReverbのNormalチャンネルを使用し(Brightオフ)、Shure SM57でマイキングしました。
なおCULTにはペダルの詳細な説明と製作者K.Taichi氏のインタビューが掲載されていますので、是非そちらもご参照ください。
Basic Setting [演奏箇所:0:25〜1:20]
- Vol
- 3(時方向)
- Tone
- 12
- Gain
- 12
- Chew
- Off
まずはToneとGainを12時にした基本的設定から。Volは聴感上でバイパス時と同じくらいの音量にしてあります。
同じセッティングのまま、ハムバッカー/シングルコイルとタイプの異なるギターで弾き比べました。
少し暗めで太いトーンに粗めの歪みが乗った、いかにもRATらしい音色です。RATにも様々なバージョンがありそれぞれ音が違うと言われていますが、このARTはラージボックスを基にしたというだけありヴィンテージ感を醸し出した音になっています。特に歪みの質感。粒は粗めだが角に丸みがあってやわらかさを感じさせる点がヴィンテージ的だと思います。
本家の音とまるで同じというわけではありません。違いを感じる点としてはまず低域の量感が増して重心が低くなっています。それによって中低域の粘りも強くなって弾力性を感じさせます。また、雑味が洗練されてより原音に忠実なトーンに仕上がっていると思います。
この簡単なセッティングで良い音が出てくれるのは使いやすいディストーションの証だと思います。
Crunch Setting (Single Coil) [1:21〜1:49]
- Vol
- 4
- Tone
- 2.5
- Gain
- 9
- Chew
- Off
次にGainを低めにしたクランチ設定です。まずはシングルコイルから。
ヴィンテージRATの魅力のひとつはローゲインでの味わい深いクランチ感でしょう。このARTはその美味しい所をしっかり表現していると思います。歪み過ぎず程良いサチュレーションが加わった心地良いトーンです。プリアンプ的にかけっぱなしでも使える設定だと思います。
Crunch Setting (Humbucker) [1:50〜2:23]
- Vol
- 3
- Tone
- 2.5
- Gain
- 8.5
- Chew
- Off
続いてハムバッカー でもクランチ設定で弾いてみました。Gainはシングルコイルと組み合わせた時よりも若干下げています。
このナチュラル感ある歪みと歯切れの良さは、例えば現行のRAT2とはかなり違う質感ではないでしょうか。コード・カッティングは勿論、単音のリードにも合います。手元のニュアンスがよく出る、表現力の高い設定です。その分演奏のアラも見えやすいセッティングですが、これもまた良いローゲイン・ペダルの証と言えるでしょう。
Controls [2:25〜3:12]
- Vol
- 3
- Tone
- Min-Max
- Gain
- Min-Max
- Chew
- Off/On
各コントロールを動かしながら、それぞれの効果を探ってみました。ちなみに今回ノブを操作しているのはエフェクター界屈指のマニア細川雄一郎氏 (CULT)です。
動画でも解説していますが、ARTのフットスイッチは踏んだ時に靴がノブに触れないよう、離してレイアウトされています。動画でご覧いただけるように、ブーツでも他のコントロールに当たる心配がありません。
Gainは最小ではほとんど歪みません。そこからクランチ〜ディストーションへと歪みが増し、最大付近ではファズに近い飽和感が得られます。Gainを上げるにつれ低域の音圧が増していきます。
RATのFilterは時計回りにすると音がこもっていきますが、ARTのToneは一般的なトーンと同様に時計回りで音が明るくなる仕様です。RATのFilterは効きが強く幅が広いですが、ARTのToneの効き具合は実用的に調整されています。まずToneを絞り切ってもモコモコせず、そこから3時くらいまではなだらかに明るくなる印象です。最大付近で割と急激にギラつきが増します。このジャリッとしたブライト感もまたRAT的と言えるでしょう。
Volは音量が比較的低めの仕様だと思います。この動画では3時付近での設定が多いですが、その辺りがバイパス時とバランスが取れるポイントです。
最後に独特なネーミングのスイッチ”Chew”。主に低域のブーミーさを軽減するローカット的な効果が得られます。前述の通りGainを高めにすると低域が増す仕様なので、飽和感を抑えたい場合や歯切れを良くしたい時に有効です。Chewはその特性上、Gain低めの設定だと効果が感じられにくくなっています。
with Guitar Volume [3:13〜4:23]
- Vol
- 3
- Tone
- 3.5
- Gain
- 12
- Chew
- Off
ここではギターのヴォリューム・コントロールへの反応性をチェックしました。
まずはヴォリューム「3」から。ほぼクリーンと言える状態まで歪みを抑えています。そこから「5」「7」「10」と段階的にヴォリュームを上げています。連続的に歪みが増していくのがわかると思います。クリーンからリード・トーンまでを手元で操作出来るダイナミクスを備えています。
Dark Tone [4:24〜4:57]
- Vol
- 3
- Tone
- 7
- Gain
- 12
- Chew
- Off
ここではToneを絞り切った設定で弾いてみました。
コモッた感じは皆無で、暗めのディストーションという印象です。歪みの質感も滑らかになり、スムーズな弾き心地を感じられるセッティングです。
Fuzzy Distortion [7:03〜7:35]
- Vol
- 3.5
- Tone
- 12
- Gain
- 5
- Chew
- Off→On
ここではGainを最大にしました。
分厚い低域による強い飽和感がファズを思わせます。このようにファズとディストーションの中間的な要素もあり、ビッグマフ的な歪みが欲しい時にも使えます。
途中からChewスイッチをオンにしてみました。低域がすっきりして飽和感が抑えられ、歯切れも良くなるのがおわかりいただけると思います。
Bright Setting [7:36〜7:58]
- Vol
- 3
- Tone
- 5
- Gain
- 5
- Chew
- On
ToneとGainを最大、更にChewをオンにしたブライトな設定です。
エッヂの効いたクリスピーなディストーション・サウンドです。このような極端なセッティングだとモダンなハイゲイン・ディストーションではメタリックになるものが多いですが、ARTはあくまでクラシック・ディストーションの領域にあるトーンです。「がっつり歪ませたいけどいかにもメタルみたいな感じにはしたくない」というようなリクエストに応えるペダルだと思います。
High Gain Lead [7:59〜8:21]
- Vol
- 5
- Tone
- 3
- Gain
- 5
- Chew
- On
最後にハイゲイン設定でリードを弾きました。
シングルコイルの細さや高域の痛さを感じさせない太いトーンです。 ブライトなギターやアンプのピーキーさを抑えつつ、深く歪ませる事が出来ます。
総評
ヴィンテージRATの持つ魅力を余すことなく再現し、扱いにくさを改善し音のクオリティを上げる。そんなコンセプトがそのまま形になったようなペダルだと思います。本家への愛情とリスペクトを強く感じました。私自身もRAT1が特に好きなエフェクターなので、非常に共感出来て嬉しくなりました。
特定のモデルを基にしたエフェクターというのは、オリジナルよりダウンサイズ化される事が多いように思いますが、このARTは同じくらいまたはむしろ大きめの筐体が採用されています。このサイズ感やスイッチ/コントロール類のレイアウトもあって、無塗装の無骨な質感ながらユニークな雰囲気を醸し出しています。サイズやパーツ、そして作業等についての拘りは製作者のインタビューで読む事が出来るので是非。
先日ペダルショップCULTで販売開始された所、すぐに売り切れてしまったようでかなり注目が集まってきています。気になる方はお早めにご予約を。
RAT好きな方は勿論、上質で幅広く使えるクラシック・タイプのディストーションをお探しの方にお薦めします。
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