ここ最近の最推しペダル「Benson Preamp Pedal」レビュー
- 2020-07-29 (水)
高い反応性と味わい深いサウンド
「Benson Preamp Pedal」を紹介します。アンプ・メーカーBensonが自社のチューブアンプ “Chimera 30W” の回路を基に開発したペダルです。私はこのペダルをエフェクター・ブックVol.48の新製品レビューで試したところ、気に入ってすぐ入手してしまいました。以来ギターを弾く時はほぼかけっぱなし。最近制作したオヤイデやKarDiaNの動画でも使っています。このページで、私がここしばらくで最も推したいペダルの魅力を伝えられたらと思います。
今回もシンプルな試奏動画を制作しました。まずはその音を確かめてみてください。
【Simple Review】Benson Preamp Pedal【Subbed | 字幕】
使用機材
- ギター
- APⅡ MAF-8120GP
- ギター・アンプ
- Kemper Profiler :(使用モデル:Fender Deluxe Reverb)
Preamp Pedalは真空管の代わりにFETトランジスターを使用していますが、サウンドのイメージは真空管アンプChimeraそのもの。
Preampという名は単純にプリアンプの回路をモデルにしているため冠された名であり、実際はクリーンブーストからクリーミーなオーバードライブ、ファズのような太いディストーションまでの幅広いゲインレンジを持っています。通常のドライブペダルとは異なりダイオード・クリッピングをしていないためダイナミックレンジが広く、ゲインを上げても音像を狭めるようなコンプレッションを感じません。ブティックアンプの手前に接続してONにした時にも、アンプが本来もつダイナミックレンジを充分に活かせます。
ギターのボリュームを下げても、レンジを残したままゲインが下がる追従性も特筆すべきものがあります。
レビュー
まず全てのノブを12時方向にしてオン。この状態の音が好みかどうかで、”Benson Preamp”への評価がほぼ決まるかも知れません。歪み度合いはクランチ。オールド・スクールなチューブ・アンプのヴォリュームを上げた時のようなチリチリしたサチュレーション。演奏の強弱が如実に音へ反映される反応性と速さ。音が前面に出てくるような中域の厚み、重心の低いふくよかな低域、そして繊細な空気感を表現する高域。このような特徴から得られるのは、良いアンプを弾いているような感覚です。いきなり結論のような感想を書いてしまいましたが、このペダルが合う人なら全ノブ12時の設定で十分魅力が伝わるのでは、と思います。実際私はこの設定を基本にして使っています。
EQは”Treble”と”Bass”の2バンド。”Treble”は音の明るさや鋭さ、”Bass”は太さや重さを調整する感じで、音の印象を演出します。この効き具合が絶妙で、どんな設定でも破綻を感じない仕上がりになっています。逆に言えば極端な音作りには不向きという事でもありますが。しっかりとした音の芯には手をつけず、質感を調整するようなEQです。
”Drive”はゲインを調整します。下げればクリーン・ブースター的にも使えます。この時のあたたかみのあるトーンもまた味があります。”Drive”を上げていくと歪んでいくのですが、このゲインの増し方もアンプライクな所です。クリッピングしていないとの事で、コンプ感が薄く活き活きとした歪みを感じます。
”Volume”はマスター・ヴォリュームですが、実はこちらも上げていくと歪みます。”Drive”がプリゲインなら”Volume”はポストゲイン、という印象を受けます。アンプに例えると1ヴォリュームのチューブ・アンプが音量を上げると歪む、そんな感覚です。”Drive”を上げた時は中高域が盛り上がるような歪みでしたが、”Volume”を上げた時の歪みはもっと低域が膨らんだトーンに感じます。どちらで歪ませた場合でも、ギターのヴォリュームを絞れば歪みを落としてクリーンに近づける事が出来ます。
”Drive”と”Volume”の設定によってはファズを思わせる荒々しい歪みが得られます。しかし強く歪ませてもニュアンスがかき消されないのが特徴的です。この特徴は音に表情を付けやすい反面、誤魔化しが効かないという事でもあります。例えばディストーションで歪ませた場合はアタックが潰されて一音毎の音量の差異が減り、各音がなめらかに繋がって弾き易くなります。”Benson Preamp”の歪みはアタック感が残ったままなので、ピッキングのアラなどが出やすいのです。むしろ歪みが増すほどに弾きにくく感じるかも知れないという、ある意味恐ろしいペダルです。
動画では単体でのみ音出ししましたが、他の歪み系ペダルと組み合わせても勿論使えます。例えばオヤイデの動画でのギターの音は全て”Benson Preamp”がオンになっています。クリーン〜クランチなトーンでは前段に”Klon KTR”を繋いできらびやかな音に。ディストーション・サウンドでは後段に繋いだ”ProCo RAT”をプッシュするブースターとして輪郭と押し出し感を増強、という感じです。好みにもよりますが、ゲイン低めのペダルは”Benson Preamp”の前に、ゲインまたはアウトプット・レベル高めのペダルは後ろに繋ぐと、それぞれの持ち味を活かしやすいように思います。
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”Benson Preamp”の音には「往年の名盤から聴こえてくるような歪み」を感じます。(具体的にこれというアルバムなどは無いのですが)良いアンプが良い状態で鳴っている、そんな感覚が得られるのです。ただそのトーンはあくまでも昔ながらの真空管アンプを思わせるものです。あたたかさや粗さが魅力的な反面、クリーンできめ細かいモダンなトーンとは真逆の方向性と言えます。何でもこなす器用なペダルというわけではないので、好みが分かれるかと思います。
さて、”Benson Preamp”の魅力が伝わったでしょうか。一度オンにするとオフにしたくなくなる、そんな逸品です。
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