真空管搭載ブースター&バッファー「Beyond Tube Booster」「Beyond Tube Buffer+」
- 2020-01-08 (水)
真空管の高品位なサウンドとインパクト大のデザイン
2019年に出来たばかりのブランドThings Inc.からリリースされた「Beyond Tube Booster」と「Beyond Tube Buffer+」を紹介します。
どちらの機種も真空管が垂直に突き出したインパクトあるデザインを持っています。外観のみならず音質にも拘りが感じられるペダルとなっています。
この2機種の動画を制作しましたので、まずは是非ご覧ください。
それぞれのレビューはこのページ下方にあります。
Beyond Tube Booster【真空管搭載ブースター】
Beyond Tube Buffer+【真空管搭載バッファー】
使用機材リスト
- ギター
- APⅡ MAF-8120GP
- ギター・アンプ
- Kemper Profiler
Beyond Tube Boosterレビュー
ギターの音は三極真空管を通し増幅すると、基本波に加え第2調波が含まれます。
基本波の偶数倍の周波数であるため偶数次調波とも言い、基本波と協調し、より豊かで広がりのある音を形成します。
これが真空管によって作り出される音が心地よく暖かく感じられる理由です。
まずは「Beyond Tube Booster」からレビューします。
動画の序盤から中盤までは、ギター→Beyond Tube Booster→Kemperの順に繋いでいます。Kemperのアンプ・モデルはFender Twin Reverb, Roland JC-120, Vox AC30, Marshall JCM2000。それぞれのアンプに対してBeyond Tube Boosterのオン/オフやブースト・レベルを変えながら効果を確かめてみました。
クリーン・サウンドに対しては温かさと太さ、そしてナチュラルなサチュレーションが加わるのがわかると思います。Twin Reverbではブースト・レベル高めでクランチ程度の歪みが得られます。一方JC-120では歪み感が少ないですが、ブースト・レベルを上げるに従い音質に弾力性が増していきます。クリーン・トーンを歪ませないままパンプ・アップさせたい、という用途にはぴったりフィットするブースターだと思います。
VoxやMarshallの軽く歪んだトーンに対しては、ゲインが一段階上がって音が熱く元気になるような印象です。レンジ感が広くコンプ感が少ないので自然なゲイン・アップが望めます。アンプのゲイン・チャンネルがもうひとつ増えるような感覚で使えるでしょう。
ベースに対しても有効で、ボトムをより太くし、歪みの粒感を加えます。ベースの低域を損なわないくらいにワイドレンジなブースターだという事が分かります。ちなみにこの動画全編のベース・パートには全てこのブースターがかかっています。(同様に、バッファーの動画では全編のベースにバッファーをかけています)
裏蓋を開けると内部に2つのトリマーがあります。左のトリマーはトーンで、反時計回りで高中音域が減衰します。出荷時の設定は最大位置で、この動画でも最大のまま使っています。右のトリマーは音量で、こちらは出荷時規定値に調整されているとの事で、そのままの設定で使いました。
動画の後半ではエフェクターとの相性も試してみました。まずはCULT “TS808 #1 Cloning Mod.”。ブースターを前段に置いて使った際には、TSらしいトーンに勢いが加わるような効果を感じます。そして後段でブーストすると音の膜が一皮剥けたようなブライトなトーンになり、歪みの粒が際立ってきます。
最後の組み合わせに使ったのはElectro-Harmonix Ram’s Head Big Muff Piです。(ちなみにエフェクターブックVol.46の動画で使用したのとは異なる個体です)
ビッグマフ単体だとコードを鳴らした際に若干くぐもった印象を受けると思いますが、ブースターを加えると輪郭が際立ち解像度が上がるような効果を感じられます。単音に対してはアタックが持ち上がりトーン自体も明るくなって音抜けが良くなります。相性の良い組み合わせだと感じました。
Beyond Tube Buffer+レビュー
ギターからの信号は、ハイインピーダンスと言われる「インピーダンス」つまり「抵抗値」が高い状態です。
この抵抗値の高い状態は、ノイズや音質の劣化に非常に弱く、特に高音域に顕著に現れます。
通常ステージでは、5m・7mといったケーブルを使用し、ギターとアンプの間には様々なエフェクターを配置します。
これはノイズや減衰に弱い「ハイインピーダンス信号」に対し、様々な「障害」を設置しているようなものです。
バッファーエフェクターは、その信号をノイズや減衰に強い「ローインピーダンス」信号に変換します。
エフェクターボードの初段にバッファーを配することで、様々なエフェクターや長いケーブルを通しても、ギター本来のきらびやかなトーンをアンプまで送ることが可能となります。さらにこのバッファーには「真空管サウンド」をプラスする「Tube Boost ヴォリューム」が搭載されています。
ヴォリュームミニマムでは、「入力1:出力1」に設定されており、クリーンサウンドのまま「真空管らしいサウンド」を付加します。
ヴォリュームマックスでは、そのサウンドに「真空管による増幅」が加わり、きらびやかで立体的なサウンドへと変身させます。
しかもこの真空管増幅は、後段につながれた様々なエフェクターのサウンドをも、リッチで音圧と粘りをプラスするワンランク上のものへと引き上げます。
もちろん最前段に使用することを考慮した「チューナーアウト」機能も兼ね備えています。
次にBeyond Tube Buffer+をレビューします。
動画の冒頭ではバッファーについての説明と、実例を手短に紹介しています。
ギター→1mのケーブル→アンプ(Kemper)という順で接続した音は非常にクリアです。1mのケーブルでアンプ直というのは中々現実的ではないですが、ピュアな音を体感するという意味で是非試してみて欲しいです。私も軽く衝撃を受けました。
続いてはギター→5mのケーブル→エフェクターを直列で10台接続(エフェクトは全てオフ)→5mのケーブル→アンプという順に繋ぎました。この状態でのバイパス音は、先程の1mケーブル直結の音とはまるで別物というくらいに高域が削がれて元気のない音になっています。それが先頭に繋いだバッファーをオンにすると、高域が蘇って元気な音になるのが分かります。
実際のペダルボードではBOSS製品などバッファード・バイパスのペダルが入っている事も多いので今回の接続例は少し極端かも知れませんが、バッファーの有無でこれくらいの差が出てくるのは確かです。ペダル直列派の方には特にお薦めしたいです。
Beyond Tube Buffer+のフットスイッチはバッファーのオン/オフ切り替えではなく、アウトプットとチューナー・アウトを切り替える役割を持っています。LED点灯時はバッファー経由の音がアウトプット端子から出力され、LED消灯時はチューナー・アウトに切り替わり、アウトプットからの出力はミュートされます。つまり単体ではバッファーのオン/オフは切り替えられず、常時オンの状態での使用を前提とした製品となります。
この動画ではバッファーの有無による音の違いを検証したかったので、スイッチャーのループにBeyond Tube Buffer+を接続し、バイパス/オンを切り替えています。使用したスイッチャーはOne Control 1 Loop Boxです。
冒頭以降の内容は基本的にブースターの動画と同じ内容で試してみました。ブースターに比べるとゲインの変化が少なく、音色への影響もよりなだらかに感じられます。しかし艶や太さ、立体感が増す音への色付けは十分に真空管らしさをアピールするもので、こちらも魅力的だと思います。手持ちのシステムの音を活かしたままワンランク引き上げたい際には、このバッファーの方が導入しやすいかも知れません。特に歪み感を程々に抑えたい場合にはこちらの方が使いやすいと思います。
2機種に共通する注意点として、電源についての説明があります。
- 公式ページ:電源について
- https://thingsinc.tokyo/power/
要は「エフェクター用としてノイズ対策回路を搭載したスイッチング方式のACアダプター」推奨との事です。電源周りによってはノイズが乗る可能性がありますが、適切な電源を選べば問題ありません。
さて、2機種をレビューしましたが参考になったでしょうか?
1ノブのブースター、そしてバッファー。それぞれ単体で得られる効果はシンプルなものですが、様々なシチュエーションで効果を発揮するアイテムです。
「トーンをもう一段階プッシュしたい」「一皮剥けた音にしたい」というリクエストにきっと応えてくれるでしょう。