2020年版ループステーションは更に進化していた・BOSS RC-5 & RC-500レビュー

  • 2020-12-18 (金)

BOSSのルーパー2020年版2機種

BOSSのルーパー・ペダル2機種”RC-5”と”RC-500″をレビューします。どちらも2020年11月に発売された新機種です。BOSSのループ・ステーション・シリーズも世代を重ねてきましたね。今回は果たしてどのように新しくなったのでしょうか?

ちなみに私は以前ルーパーを活用したパフォーマンスをソロやバンドで数年程やっておりまして、ルーパーの機種もBOSSは勿論TC ElectronicやLine 6などのブランドでそれぞれ数種類を使用してきました。現在も普段の練習にルーパーを使用する事が多いです。ルーパーに慣れ親しんだプレイヤーの目線から両機種の音質・機能・操作性などをチェックしたいと思います。
(私のルーパーを使ったライブ動画プレイリストはこちら=https://youtu.be/eeqmpPlhqBo

さて今回のチェック環境は、ギターから歪み系ペダルを通った後にアンプ(Kemper)へ繋ぎ、Kemperのセンド/リターン(ポスト=アンプ部の後段)に”RC-5”または”RC-500″を接続しました。それでは1台ずつチェックしていきましょう。

レビュー#1 コンパクトにして必要十分な機能・”RC-5″

まずはコンパクトな”RC-5″から行きましょう。この製品の概要は下記の通りです。

RC-5は、進化したサウンド・クオリティと拡張性により、あなたのペダルボードに無限の可能性をもたらします。32bit処理の高品位なサウンドを実現し、操作性と視認性を高めたバックライト付きのLCDは、ルーパーのステータスを常に分かりやすく表示します。外部フットスイッチやTRS MIDIの入出力を活用すれば、より柔軟なコントロールが可能。50種類以上の内蔵リズムや最大13時間のステレオ・レコーディング、99のフレーズ・メモリーなど、小さな筐体にパワフルなスペックを備えたRC-5は、あなたのアイデアを最大限に引き出すコンパクト・ペダルです。 

BOSS RC-5公式サイトより

  • 高度なループ機能を搭載したコンパクト・ペダル
  • AD/DA変換32bit、内部演算32bit float(浮動小数点)処理による高品位なサウンド
  • 最大13時間まで録音可能なステレオ・ルーパー
  • ループ・ステータスとパラメーターを表示する、マルチ・カラー・バックライト付きLCD
  • ユニークな演出が可能なリバース機能を搭載
  • 7種類のドラム・キットと、2つのバリエーションを持つ57のプリセット・リズム
  • 外部フットスイッチやエクスプレッション・ペダル、MIDIによるコントロールが可能
  • MIDI端子には、省スペースのステレオ・ミニ・タイプを採用(別売BMIDI-5-35ケーブルを使用)
  • フレーズ・メモリーは最大99保存可能
  • USB経由でWAVのループ素材をインポート/エクスポート可能

32bitの音質

私が最も重要と感じたポイントはやはり32bit処理。一般的な認知としてビット数が上がるに従いダイナミック・レンジが広く=情報量が多くなり、特に音の強弱やディテールがより精細に表現される事となります。そして”RC-5″の音を実際に聴いてみると正にその理論通りの効果が感じられます。一聴してまず感じたのは音質がクリアだという事ですね。「クリア」を「鮮明」または「正確」と言い換えても良いでしょう。入力した音が忠実に再生されているという印象を受けました。これは当たり前の事のようにも思えますが、これまでのルーパーと比べて”RC-5″のループ音はリアル感が一味違うのです。例えば優しいタッチでアルペジオを爪弾く時にはピックの角度が微妙に変わるだけでトーンも少し変化しますが、そのような細かいニュアンスがより感じられるようになっています。そしてループをオーバーダビングしていってもそのクオリティが保たれているので飽和しにくく、むしろ重ねていく程に32bitの恩恵を感じられます。

手元に16bit処理のルーパーがあったので、そのペダルと”RC-5″を同じ条件で比較してみました。内容はそれぞれの機種で10個の異なるフレーズをダビングして聴き比べるというもの。通常はここまで重ねるとレンジ感が固まって所謂ダンゴ状態になり、各フレーズの輪郭が見えにくく、特に最初に録音したフレーズは奥まって聴こえがちです。ある意味これは当然で、限りあるダイナミック・レンジに音を詰め込んでいけばいずれ飽和して音が濁るのは仕方ない現象と言えます。重ねてもクリアに再生したいなら入力レベルを下げるくらいしか対処法がないでしょう。私を含めルーパー・ユーザーはそう割り切って使っていると思います。以上を踏まえた上での比較ですが、16bit機では潰れ気味に聴こえたフレーズが、”RC-5″ではもっとクリアに聴こえます。音域のレンジ感も広く、低域の飽和感が少なく高域の空気感も残っています。最初に録音したフレーズも輪郭を保っていて、これまでのルーパーより高次元の解像度を味わった気がします。ルーパーの使用頻度が高い方こそこの違いが感じられるのではないかと思います。

視認性/操作性

ルーパーの状態やプリセット名、各種パラメーターを表示するディスプレイは視認性が高いです。ルーパーのステータスに応じて下記のように色が変化します。

フレーズなし(停止時)
フレーズあり
録音中
再生中
オーバーダビング中

色の変化に加え、再生中はテンポやループの長さがグラフィカルに表示されます。

ルーパーの操作は基本的にフットスイッチで行い、ディスプレイの右にあるノブと下に並ぶ4つのスイッチでテンポ設定やプリセット・リズム、データの保存やその他設定などを行います。非常にシンプルでわかりやすいと思います。その反面、設定出来る項目がかなり豊富なので、狙ったパラメーターにたどり着くまで数ステップの操作を必要とします。このコンパクトなサイズでは妥当と言える操作感でしょう。せっかくデータのバックアップ/復元用にUSBを搭載しているので、PCで操作出来る専用アプリがあったら便利だなあと思いました。

プリセット・リズム

“RC-5″は57種のプリセット・リズムを搭載しています。パターンの豊富さに加え音色も7キットから選べ、更にリズム用リヴァーブまで用意されています。という事はリズム用にMIDIシーケンサー、音源、リヴァーブを内臓しているのでしょうか…?もうオマケとは呼べないレベルの力の入れようですね。とは言え実はこれまで私、ルーパーにリズム・マシン機能があっても殆ど使ってきませんでした。その理由は、音色やパターンが好みのものが無かったからです。音が軽かったりフレーズがイケてなかったりすると、なかなか合わせて弾く気になれないものです。なのでルーパー内蔵リズムはあくまでオマケと捉えてました。しかし”RC-5″のプリセット・リズムは「使える」クオリティです。まず、やけに音が良い。特にキックの低域がしっかり出てボトムの芯があり、全体的にクリアかつ音圧高めです。そしてパターンも飽きがこないフレーズというか、良い意味で主張してこないものが多く好感が持てました。プリセット・リズムには正直あまり期待していなかったのですが、流石BOSS/Rolandだなと唸らされました。実際私はここ最近毎日の練習で”RC-5″のプリセット・リズムを鳴らしています。

感想まとめ

ルーパーは時代とともに進化してきており、新製品が出る際に話題になりがちなのは新機能や録音可能時間が増えるといった点かと思います。それは勿論歓迎すべきなのですが、何台もルーパーを渡り歩いてきた上で普段使い用に欲しくなるのは結局「扱い易く音が良い」というごくシンプルな条件を満たしてくれるものだったりします。音質に関してはもうしばらくクオリティが激変する事は無いのかもな、とおぼろげながら思っていたのですが”RC-5″はその壁を超えてきたように感じます。これまで使ってきたルーパーと聴き比べてこの32bitのクリア感を知ってしまったら、もう古い機種には戻れなくなるかも知れません。ルーパー界の新たなスタンダードと言っても過言ではない仕上がりです。

デジマート|「BOSS RC-5」販売ページ
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レビュー#2 更なる多機能と分離感・”RC-500″

さて続いてはフットスイッチを3個備える多機能版”RC-500″をレビューします。こちらもまず概要を紹介しておきましょう。

RC-500は、ギタリスト、シンガーソングライター、マルチ・プレイヤーなど、ループ・パフォーマンスを新たなステージへとレベルアップさせたいミュージシャンにとって、無くてはならないパートナーです。2つのループ・トラック、マイクとステレオ入力に対応したインプットに加え、多様なリズムと想像力を掻き立てるLOOP FXを装備。その全てが32bitの高品位なサウンドで出力されます。また、作成したフレーズは内蔵メモリーに保存可能。外部コントローラーやMIDIでの制御にも幅広く対応しています。次世代のループ機能が詰まったRC-500 LOOP STATIONは、アーティストに新たなアイデアを提供し、オーディエンスの想像を凌駕したパフォーマンスを可能にします。

BOSS RC-500公式サイトより

  • ミキシング機能と充実したコントロール機能を備えた、高度な2トラック・ルーパー
  • AD/DA変換32bit、内部演算32bit float(浮動小数点)処理による高品位なサウンド
  • 最大13時間まで録音可能なステレオ・ルーパー
  • ループ・ステータスとパラメーターを表示する、マルチ・カラー・バックライト付きLCD
  • 柔軟なセットアップに対応できるモノラル/ステレオ対応の入出力端子と、ファンタム電源搭載の独立したXLRマイク入力端子
  • フレーズに躍動感やユニークなアレンジを与えるリバース機能とLOOP FX(REPEAT/SCATTER/SHIFT/VINYL FLICK)
  • 16種類のドラム・キットと、2つのバリエーションを持つ57のプリセット・リズム
  • 外部フットスイッチやエクスプレッション・ペダル、MIDIによるコントロールが可能
  • 省スペースなステレオ・ミニ・タイプのMIDI入出力端子(別売BMIDI-5-35ケーブルを使用)
  • メモリーは最大99保存可能
  • USB経由でWAVのループ素材をインポート/エクスポート可能
  • ACアダプターと単三電池での使用が可能な2電源方式

こちらも32bit処理、マルチ・カラー・ディスプレイ、プリセット・リズムなど”RC-5″同様のスペックを持っています。基本性能については少なくとも同等の品質を備えているので、上述の”RC-5″での説明をこちらにも当てはめて差し支えないでしょう。以降は”RC-500″のみが備える特徴について触れていきます。

2トラック仕様

“RC-500″の特徴のひとつは2トラック仕様です。今では複数のトラックを搭載したルーパーは珍しくないので、それ自体は特筆する程ではないかも知れません。しかしここでも32bitの恩恵による音質の高さを感じる事が出来ます。”RC-5″で十分クリアに思えた音質が、2トラックになって更に解像度が増したように感じられるのです。試しに両機種で2つのループを重ねて聴き比べてみました。”RC-5″では1トラックしかないので普通にループを重ね、”RC-500″では各トラックに1つずつループを入れてみた所、双方の分離感に明らかな違いを感じました。”RC-500″では2つのループがそれぞれくっきりした輪郭を保っています。先程までかなりクリアだと感じていた”RC-5″を更に上回るクオリティです。考えてみれば当然の結果とも言えるのですが、実際聴き比べると想像以上の効果を感じます。ルーパーで曲を構築する方にとってはこの解像度は大きな魅力となるでしょう。

2トラックはそれぞれレベル調整用にフェーダーを備え直感的に音量を操作出来ます。各トラックに用意されたパラメーターも豊富で、ルーパーに求められる要素はあらかた網羅していると思います。

ちなみに今回紹介している両機種は、それぞれ同じ機種同士の2台同期使用が可能です。例えば”RC-5″が2台あれば2トラック・ルーパーとして使える事になります。そして”RC-500″が2台あれば4トラックが使えるわけですね。アイデア次第で可能性が広がる拡張性を秘めています。

エフェクト

“RC-500″のもうひとつの特徴はエフェクト機能。再生中のループに時間系エフェクトを加える事が出来ます。エフェクトの内訳は下記の通りです。

SCATTER1 〜 4
トラックがビート(拍)に合わせてスクラブ再生されます。
REPEAT1 〜 3
トラックがビート(拍)に合わせてリピート再生します。
SHIFT1 〜 2
トラックがビート(拍)の長さだけズレて再生されます。
VINYL FLICK
トラックがターンテーブルを触っているような効果になります。

いずれも基本的にDJ的なエフェクトと言って良いでしょう。

フットスイッチ/操作性

3つのフットスイッチは軽めの踏み心地でストレスなく操作出来るでしょう。フットスイッチ間の間隔も絶妙な配置だと思います。各フットスイッチはそれぞれ機能を変更可能で、設定はかなりバリエーション豊かなのでカスタマイズしがいがありそうです。ただ多くの機能をリアルタイムで活用したいならフットスイッチ3つでは物足りなく感じるかも知れません。外部フットスイッチは欲しくなると思いますし、またはMIDIコントローラーでより多くの機能を割り当てる手もあります。

機能の多さと操作性のバランスは両立が難しいと思います。”RC-500″は基本性能を使う分にはわかりやすくデザインされており、その反面エフェクトやシステム設定などのパラメーターにたどり着くには少し慣れが必要かと感じました。入り口は広く奥は深い、そんな印象を受けた次第です。

感想・まとめ

BOSSのループ・ステーションというフォーマットの正当な進化系だと感じました。とっつきやすく音が良い、そしてマニアックな使い方にも対応可能なモデルです。デフォルトの設定のままで直感的に操作出来る点はBOSSらしくユーザー・フレンドリーです。そしてルーパーを使うパフォーマーが増え使い方も成熟してきた現代のシーンにフィットし、かつ更なる可能性を見越した1台と言えるでしょう。パフォーマーにとっての新たな活力剤となり得ると思います。


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