CULT制作のKemperリグを弾いてみた【11種のアンプを紹介】

  • 2021-09-22 (水)

マニアが選んだアンプ・コレクションをこの手に

独自の品揃えで知られるエフェクター専門店“CULT”からKemperのリグ集が販売されました。内容はCULTが所有する複数台のアンプをプロファイリングしたもので、コンボ・アンプ編とスタック・アンプ編の2種がリリースされています。

私自身もKemperユーザーで、ここ数年は毎日のように使用しており欠かせない機材となっています。それなりの数のリグを試してきましたし、今も気になるものがあればチェックしています。尋常ならざる拘りを持つCULTの手によるリグと聞いては期待も高まります。というわけで、今回発売された全リグを試奏してみます!

当店は名目上はエフェクター専門店ですが、様々な環境でエフェクターを評価、試奏するため、複数台のアンプ、スピーカーキャビネットを所有しています。それらのアンプ、スピーカーキャビネットの音色が素晴らしかったこと、そして同時に市販されているKemper Rigの中に気に入ったもの(特にクリーン、クランチサウンド)を見出せなかったことから、CULTオリジナルのRigの制作に着手しました。

CULTのRigは、そのほとんどが実際のエフェクターを接続することを前提にプロファイリングされたクリーン、クランチサウンドのものとなります。デジタルアンプの類では歪みエフェクターと組み合わせた際、実際のアンプと挙動が大きく異なることが多かったと思われますが、音色以外にそういった反応性も実際のアンプに近づけたRigを目指しました。深く歪んだRigもありますが、アンプの録り音に近く、且つ使用した機材の特徴がしっかりと出せていることを意識してプロファイリングしました。

プロファイリングには様々な試行の末にたどり着いた複数のマイク、真空管式のステレオ・マイクプリアンプ(HA)を使用しています。プロファイリングするアンプは使用する真空管、スピーカーの個体差、Fuseにすらこだわっているものであり、Kemperの電源も100V 60Hzに安定化させてプロファイリングを進めました。(そこまでのこだわりをKemperが汲んでくれているのかは疑問ですが)

市販されているKemper のRig集の多くはマイキングの違いによって多数のバリエーションが収録されていますが、CULTが作るRigは1モデルにつき、1つのマイキングのみを収録しています。これは、プロファイリングするアンプが持つ音色の特徴が最も解りやすく発揮され、そしてその場で聴いている音色と大きく印象が変わらない音で録れるマイク、マイクの位置のみで収録しています。楽曲、アンサンブルでの存在感を考えて録った音ではなく、一人で優れたアンプを弾く楽しみをなるべく損失なく収めた個人用Kemper Rig。これがCULTが今回に制作したRigの基本コンセプトです。

表面的な音色だけでなく、音の圧力、スピード、タッチレスポンスなどを考えてしまうと、このRigが「実際のアンプと同じである」とは言えませんが、それでも歪みエフェクターを使用した際の反応や、ライン録音した際の音色は、真空管アンプが好きな方でも合点がいくようなものになっているのではないでしょうか。

新型コロナウィルスが蔓延するこのご時世、自分の好きな機材で大きな音を出せる機会が減っていると思いますが、このCULTオリジナルのRigを使って低音量下でもギター、ベース、その他の楽器の演奏を楽しんでいただけたなら非常に幸いであり、そして光栄です。

CULT公式ページより

エフェクターを使用する前提で制作されたという事なので、試奏には数台のエフェクターを接続してチェックしました。詳細は下記をご参照ください。なお今回のレビューは動画や音源はありません。

使用機材
ギター
APⅡ MAF-8120GP
エフェクター
Cornell The 1st Fuzz(ファズ)
Organic Sounds Zeus(オーバードライブ)
Organic Sounds Poseidon(ブースター)
ギター・アンプ
Kemper Profiler

レビュー:Combo編


https://www.cult-pedals.com/products/cultic-kemper-rig-combo

コンボ編は6種のアンプを用い、10種のリグが収録されています。

Fender Hot Rod Deluxe [2000s]


CULTのリファレンス的な存在のアンプという事で、素直なレンジ感を持ったリグです。基本的にウォームでクリーンですが適度なサチュレーション感を纏っていて、それが歪み系ペダルの乗りの良さに繋がっています。様々なタイプの歪みとの相性の良さを窺わせます。私個人はFender Deluxe Reverbのリグをリファレンスにしていますが、このHod Rod Deluxeも良いなと思いました。

Vox AC30 [1964]


澄んだ高域がVoxらしさを存分に感じさせつつ倍音の響きがメロウで、エッヂが程よく丸みを帯びているあたりにヴィンテージ感が漂っています。音圧でクロスが揺れる様を想像させるリアルなトーンです。クリーン・ブースターや軽めのオーバードライブとの相性が良さそうです。ファズと合わせた場合ギター・ヴォリュームを下げた際の鈴鳴り感が際立ちます。一方ギター・ヴォリューム最大ではヘッドルームの小ささ故かファズの轟音が鳴り切っていない感も。

Roland JC-120 [1975]


基本的な質感は慣れ親しんだあのトーン。しかし古い個体という事もあってかJCらしいきらびやかさは控えめで、それが使いやすさという点では功を奏していると思います。個人的にJCを使う際はCh2のLowインプットに入力する事が多いので、このプロファイリングは違和感なく使えます。微かにサチュレーションが乗っているあたりはCULTらしいセンスで、歪み系ペダルとの絡みがより良くなるでしょう。現行品とは違いを感じるトーンなので「俺の知ってるJCの音じゃない」という意見は出てくるかも知れません。

Fender Twin Reverb [1965]


濁りが少ない、とても澄んだクリーンなトーンのリグです。特にクリーン・ブースターや、ファズをかけた上でギター・ヴォリュームを絞った際の鈴鳴り、その凛とした響きは格別に美しいです。歪み感の少なさを活かして、コンプレッサーやローゲイン系オーバードライブなどを合わせてクリーンかつ前に出てくるトーンを作るのに非常に向いています。深く歪ませるならトーンを絞り気味で高域を抑えると使いやすいかと思います。

Selmer Zodiac Twin 30 [1964]


柔らかく温かいクリーン・トーンです。優しいタッチでゆったり弾きたくなるような音色です。「CH1」も「LB(Low Bass)」も低域が豊かで心地よく、メロウで少しダークなトーンはジャズにもフィットするでしょう。歪み系ペダルを合わせるならゲイン低めのものとの相性が良いと思います。低域がブーミーなファズなどでは飽和し過ぎるので合わせない方が無難でしょう。「TR(Treble)」は低域がばっさりカットされているので使い所が限られそうです。

Maxon Micro Teacher [1979]


これはちょっと変わり種ですね。レコーディングで敢えて違う毛色の音が欲しい時など小型アンプや小口径スピーカーを鳴らす場合があります。中〜大型アンプとは違うレンジのピーク感がオケの中で存在感を放って良いスパイスとなる使い方です。このリグは正にそんな立ち位置かなと思います。ブレイクアップさせた時のバリバリっという歪みや軽やかなトーンはグラム・ロック的ないなたいリフを弾きたくなってきます。

レビュー:Stack編


https://www.cult-pedals.com/products/cultic-kemper-rig-stack

スタック編は5種のアンプ・ヘッドと2種のキャビネットを用い、18種のリグが収録されています。

Hiwatt DR-201 [1973]


Hiwattの特徴的なヘッドルームの大きさがよく表れていて、ペダルでブーストしてもクリーンなまま音量が上がっていく印象です。歪ませずに音圧を稼げるリグを求めている方にお薦めです。がっつり歪ませても音の輪郭を崩す事なく再生してくれるのでファズとの相性は特に良いと思います。逆にアンプをプッシュしてドライヴ感を得るタイプのブースターだと、アンプ側の歪み感が少ないので旨味を活かしきれないかも。

Custom Audio Amplifier OD-100 SE Plus [2010]


キャビネットの箱鳴り感を引き出す豊かな低域を持ったアンプだと思います。Ch.1はアルペジオによく合うクリーン、Ch.2はザクザクと刻むリフにぴったりのハイゲインで、モダンなメタル仕様のリグ・セットとも言えるでしょう。CULTのイメージからすると少し意外かも知れません。ペダルではなくアンプの歪みをメインにしたい方向けで、歪み系エフェクターを絡めるならブースターやローゲイン系オーバードライブといった所でしょう。

Orange OR-120 [1972]


ソリッドな質感を持ったリグです。この硬い感触のトーンはブーミーな歪みと組み合わせると埋もれる事なく轟音を押し出してくれるので、ファズとの相性は抜群でしょう。クリーン・ブースターやディストーションなどと組み合わせた場合はこのリグの持つ硬さが裏目に出てピーキーになる傾向があるように思います。比較的低域がルーズな歪み系ペダルやダウン・チューニングしたギターも合いそうです。

Marshall Super P.A.100 [1968]


マーシャルのイメージからすると意外なほどクリーンかつセンシティヴなリグです。重心の低いボトムがありつつ中高域がクリアに伸びる、とてもエフェクター映えするアンプと言えるでしょう。クリーン・ブースターではきらびやかに、オーバードライブではタイトな歪みを、そしてファズでは地鳴りのような歪み、そこからギター・ヴォリュームを絞れば鈴鳴り、と歪み系ペダルの持ち味を遺憾なく引き出してくれます。

Bogner Shiva [2005]


王道のスタック・アンプのトーンをブラッシュ・アップしたような、クラシックとモダンの中間とも言えそうなリグ・セットです。解像度高めで低域の輪郭もクリアながら中域の量感が豊かで、硬すぎず適度な柔らかさを併せ持っています。各種歪み系ペダルとの相性も良さそうです。基本的にアンプで歪ませつつペダルでゲイン・アップやレンジ感をフォーカスしてキャラクター付けするような使い方が特に合うのではないでしょうか。



今回は11種のアンプを用いた計28種のリグをチェックしました。まずはアンプのセレクションが個性的なので、このラインナップを一度に試せるという点が魅力的です。音色も汎用的なものから癖の強いものまで揃っていて、このリグ集だけでも色んなシチュエーションに使えると思います。アンプによってエフェクターのかかり具合が変わってくるのが良くわかるのがCULTらしい仕上がりと言えます。ペダルの個性をチェックするのにも向いていると思うので、ペダル・ギークやビルダーの方々にも試してみて欲しいです。ひと味違うアンプ・サウンドをお探しなら是非。



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