【ハイゲインシリーズ第3弾】Leqtique「11/11」レビュー
- 2018-10-25 (木)
極限の先へ〜意外な進化を遂げたハイゲイン第3弾
Leqtique(レクティーク)の新作エフェクター“11/11”を紹介します。
“9/9”、“10/10”に続くモダン・ハイゲイン・ディストーションの第3弾です。
前2機種とも、非常に強い個性を持ちながらも扱いやすいディストーションでした。
今回のカテゴリーは「エクストリーム・プラス」と称されています。極限のさらに先という感じの意味合いでしょうか。
一体どのような進化を遂げたのかを探っていきましょう。
公式動画を作らせていただきましたので、まずは是非その音を確かめてみてください。
Leqtique “11/11” [Distortion Extreme+]
Credit
使用機材リスト
- ギター
- FGN (Fujigen) NSG100
- FGN NST200
- FGN NST11
- ギター・アンプ
- Kemper Profiler :(使用モデル:Fender Twin Reverb & Shure SM57)
2013年のLeqtique – “9/9”を始点として、モダンハイゲインシリーズを~12/12まで4機種リリースすることを理想として設計を続けて参りましたが、昨年2017年にはよりハイゲインでミッドスクープの強い、メタリックなサウンドの“10/10”を発表し、その後なかなかその2機種を超えるアイデアのないまま、本年2018年を迎えましたが元来の9/9,10/10の当時新機軸のアイデアであった、DMOSFETをベースにしたディスクリート回路による歪みの構築から敢えて脱却し、Rogerで培われたPowerICの多段アイデアをさらに発展させることをアイデアとして今作11/11は生み出されました。
前2作は、DMOSFETの最大の特徴である非常にタイトなローエンドを持っていましたが、本作11/11ではPowerICらしい真空管ライクな、密度の集約されたローエンドとなっていることが大きな違いの一つであり、その他にもRogerで体感できるギターボリュームに対しての尋常でない、クリーンに落ちるまでのナチュラルな効き方は11/11でも継承されており、Gain=0でもそれなりの激しさを持っているものの、ギターのボリュームを回すだけで太く実用性のある煌びやかなクリーンまで落とすことができます。この特徴によりLeqtiqueの数多くの歪みペダルの中でも群を抜いて、クリーンからウルトラハイゲインまで妥協なくアウトプットすることが可能な万能機種となっています。
故に、本来10/10の方向性を推し進めてさらにメタリックな音像に仕上げようとしていたイコライジングは大幅に拡張され、Bottomは本来の高密度なローエンドに、味付けの異なるタイトなローエンドをさらに付加するように。また、Edgeと名付けられたコントロールはその名の通り、籠り気味に設定されることの多いLeqtiqueのペダルとは思えないほどエッジーなレベルまで拡張してあります。カット方向にもかなり広げてあるのでイコライジング自体もバーサタイルです。また内部に仕込まれたMid-Cutは50%(12時方向)をデフォルトとしており、ウルトラハイゲインで暑苦しくなりがちな帯域を鋭いQで少し落とし込んだ味付けとしてあります。9/9から続くシリーズのイコライジングの周波数は各モデルで全て異なりますが、今回の味付けではエッジの効き、超太いローエンドを備えた極悪ディストーションという基本キャラクターを最高点として、それぞれのコントロール幅を非常に大きとることでサウンドを甘くし、ギターのボリュームと合わせることで幅広い音楽に対応できるマシンになっている。というのが一番正しい説明だと考えます。Gainはやはり4部作中の3部作目ということで、実用範囲内限界のとてつもないハイゲインまで到達するようになっています。Power IC由来の特徴というべき、Gainを上げるにつれてさらに飽和感が増す様はシリーズ中一番、モダンハイゲインアンプの挙動に近いです。
凄まじい破壊力を持ちながらも、シリーズ随一のチューブライクな性質を備えた“11/11”ですが、メッセージとして込められた“熾烈な中の本質的な万能性”を感じ取っていただき、自由に様々な音楽の背景で是非、お楽しみ頂けたらと思います。
Shun Nokina –公式ページより–
解説
それではデモ動画での設定・音色について解説します。
Basic Setting [演奏箇所:0:23〜1:03]
- Level
- 12(時方向)
- Gain
- 12
- Bottom
- 12
- Edge
- 12
- Mid-Cut
- 12
まずは全てのノブを12時方向にした基本的セッティングから。
アンプの箱鳴りを感じさせるような低域が分厚くて図太いトーンです。歪みの粒子は粗めで、ファズ的な質感とも言えるでしょう。それでいてディストーションらしい歯切れの良さも併せ持っています。
「飽和感がありながらもタイト」という非常に珍しい特性を感じさせます。この特徴はとてもユニークだと思います。
なおMid-Cutはデフォルトの12時に設定しています。
Crunch Setting [1:04〜1:23]
- Level
- 1
- Gain
- 8
- Bottom
- 2
- Edge
- 9
- Mid-Cut
- 12
Gainを低めにしたクランチ設定で、シングルコイル・ピックアップで弾いてみました。
チューブ・アンプ的な太いクランチが得られます。鋭いエッジながらボトムがしっかりしていて安定感を感じます。
コードをかき鳴らしたり、歯切れよいカッティングに向いた音色ですね。
Lead Setting [1:24〜1:44]
- Level
- 12
- Gain
- 10
- Bottom
- 10
- Edge
- 12
- Mid-Cut
- 12
ブリッジ・ハムバッカーとネック・シングルコイルを切り替えながらリードを弾いてみました。
ピッキング・ニュアンスが見えやすいようにゲインは若干低めにしています。
バッキングに埋もれないソリッドなリード・トーンです。
Controls [1:45〜2:19]
- Level
- 12
- Gain
- Min-Max
- Bottom
- Min-Max
- Edge
- Min-Max
- Mid-Cut
- Min-Max
各コントロールの効き具合を探ってみました。使用ギターは最初のパートでも弾いているSGです。
ハムバッカーを使用したせいもありますが、”Gain”は最小でも結構歪みます。歪みの幅自体は広くないように感じます。12時以降は歪み量というより音圧や飽和感が増していく感じです。
“Bottom”は低域を調整して重厚感を増減します。音圧と音抜けのバランスをとる為にも有効なコントロールです。
前2機種で”Treble”と呼ばれていたミニ・ノブは今回”Edge”というコントロールになりました。”Treble”に近い操作感ですが、より音の輪郭に影響する効果を持っています。最大では歪みの粒が際立ち、最小ではスムーズにならします。
10/10では排除されていた内部トリマーの”Mid-Cut”は11/11で復活しました。
動画では他の全てのコントロールを12時にして、”Mid-Cut”を最小から最大へと回してみました。
最小から3時くらいまでは緩やかに中域がすっきりしていく感じで、最大付近で急激にミッド・スクープされドンシャリのトーンになります。
9/9, 10/10との比較 [2:20〜2:51]
シリーズ3機種を比較してみました。同じフレーズをルーパーに仕込み、各機種の全コントロールを12時にした状態での比較です。
9/9は倍音が凝縮されたような高密度のサウンドです。こうやって並べてみると比較的ダークな質感を感じます。
10/10は歪みの質こそ9/9に近いですが、非常に硬質でシリーズ中最もメタリックなサウンドです。
そして11/11。前2機種は圧縮感が強くタイトな印象がありますが、11/11はもう少しオープンで、ある意味ラフで暴れたキャラクターを感じます。より真空管アンプ的な挙動という見方も出来ます。
短いパートですが、それぞれの持ち味を感じていただけるのではないでしょうか。
なお各機の”Edge”/”Treble”ノブは目盛りが見えやすいように処理してあります。実際には真っ黒です。
Responsive Setting [2:52〜3:31]
- Level
- 12
- Gain
- 9
- Bottom
- 1
- Edge
- 2
- Mid-Cut
- 12
ギターのボリュームに対する反応性をチェックしました。
まずはボリューム「3」の状態から。完全にクリーンといえるトーンになっています。濁りもこもりもなく、色気のある音色です。
続いてボリューム「6」まで上げるとクランチになります。コードの分離感を保ちつつ程良い粗さが加わります。このくらいの歪み設定は使い所が多いと思います。
そしてボリュームを「10」にすると一気に飽和感が増します。この音色の変化はかなりファズ的といえるでしょう。ディストーションでこのような反応性を見せるペダルは中々無いのではないでしょうか。
Mid Scoop [3:32〜3:51]
- Level
- 10
- Gain
- 2
- Bottom
- Max
- Edge
- Max
- Mid-Cut
- Max
Mid-Cutを最大にしてみました。更にBottomとEdgeも最大にした極端な設定です。
設定から想像出来る通りの極悪な歪みですね。キレの良さはモダン・ディストーションの範疇に入ると思いますが、よりワイルドなサウンドです。
10/10はソリッド感が強くジェント的ですが、11/11はもっとガレージ的な荒々しさがあります。
どちらにしてもかなり強烈な歪みなのは間違いありません。このサウンドに慣れた後では9/9のサウンドがマイルドに聴こえてきてしまう程です。
Mid Focus [3:52〜4:13]
- Level
- Max
- Gain
- 3
- Bottom
- Min
- Edge
- Min
- Mid-Cut
- Min
最後はMid-Cutを最小に。そしてBottomとTrebleも最小にして中域にフォーカスしたセッティングです。
こんな極端な設定にしても不自然さを全く感じさせないトーンに仕上がります。
スタッカートでもレガートでも粒立ちの良いリード・トーンです。
ちなみにこのパートではLeqtique EDMでディレイをかけて若干奥行き感をプラスしました。
総評
モダン・ハイゲインの9/9、よりエクストリームなメタルに特化した10/10。そこからどのような変化を見せるのか、現物に触れるまでは予想がつきませんでした。正直、前2機種で既にモダン・ハイゲイン・ディストーションの領域は十分カバーしているように思えたからという理由もあります。
結果的に11/11は太さと荒々しさ、そして高い反応性というアンプ的でファズにさえ通じる要素を持ったモデルに仕上がっていました。
ディストーションの領域を拡張していく過程でアンプに近いダイナミクスを獲得し、いつの間にかファズに近い要素をも取り込んでいた、という感じではないでしょうか。
低域の歯切れの良さやBottom/Edge/Mid-Cutの効き方、そしてノイズの少なさ等も実にモダンなクオリティの高さを誇ります。
このように非常にモダンながら荒々しいテイストも違和感なく備える歪みエフェクターは他に思い当たりません。独自の進化を遂げた正にオリジナルの歪みペダルだと思います。
ウイークポイントとしては「ミニノブの目盛りが見えにくい」「”Mid-Cut”が裏蓋を開けないと調整出来ない」といった点が従来通り評価が分かれる所でしょう。
あと前2機種は18Vまでの駆動が可能でしたが、11/11は12Vまでに制限されているので要注意です。
11/11はシリーズ3機種の中で最も守備範囲の広いモデルとも言えます。EQの範囲も実用的で、使える場面は多いでしょう。
楽器店で全機種を弾き比べるのも面白いと思います。
個人的にはここ1年ほどに弾いた新製品の中で最も気に入った1台です。是非お試しください。
Leqtique 販売リンク | デジマート
Photo by Yuichiro Hosokawa