【動画+レビュー】One Control | Super Apricot OD – スプロ系オーバードライブ
- 2018-01-17 (水)
コンボの飽和感を演出するアンプ・イン・ア・ボックス
One ControlのSuper Apricot OD(以下SAOD)をレビューします。
前回レビューしたHoney Bee OD(以下HBOD)と同じくスプロ・アンプにインスパイアされたモデルですが、HBODがオーバードライブなのに対してこのSAODはAIAB(アンプ・イン・ア・ボックス)とカテゴライズされています。
名作HBODに続けて「スプロ系」をリリースしてきたという事で、意欲的なペダルだと感じさせます。
今回も公式デモ動画を制作させていただきました。
まずは是非ご覧ください。
One Control | Super Apricot OD [Designed by BJF]
Credit
- Music / Movie / Cast
- Jake Cloudchair
- Thanks to
- Fujigen
- OKADA International Inc.
- 荒井貿易
- Comawhite Custom Cable
- Garret Works
使用機材リスト
- ギター
- Fujigen NST200
- Fujigen Expert ODYSSEY
- ギター・アンプ
- Koch Studiotone 40XL Head
- ベース
- FGN NJB200, One Control Sonic Silver Peg & Lemon Yellow Compressor
- 【ティーザー動画】One Control Sonic Blue Twanger
- 【4週連続レビュー#4】One Control Purple Plexifier
- 【ダンブル系ペダル・レビュー】One Control | Golden Acorn OverDrive Special
解説
初期の真空管コンボアンプ。シンプルな作りのそのアンプは、初期のロックンロールサウンドのコアであり、魂とも言えます。
One Control Super Apricot ODは、そんなスプロアンプのトーンを作るAIAB(アンプ・イン・ア・ボックス)です。Super Apricot ODを設計したBJFといえば、“スプロアンプからインスパイアされた”トーンのペダルとして知られる、伝説のHoney Bee ODの設計者でもあります。
Super Apricot ODは、Honey Bee ODよりも“少し後”のアンプサウンド。特徴を簡単に言えば、ジャジーな滑らかさとダークさのあるHoney Bee ODと、ロックなSuper Apricot ODと言えます。
回路上は一切共通点はありません。Super Apricot ODはAIABであり、Honey Bee ODはオーバードライブエフェクターなのです。Super Apricot ODの音色は、クラシックなアンプトーンが持つ素朴なトーンと言えますが、音を出していくにつれ、その奥深さに驚くことでしょう。
恐ろしくダイナミックでコントローラブル。サウンドにコンプレッション(圧縮感)を一切感じないのに、強いサチュレーション(飽和感)があるのです。サンダーボルトというアンプがあります。ベースアンプとして作られたその15インチコンボアンプは、ベースアンプとしては一般的な汎用モデルでした。ところが、そこにギターを接続すると魔法がかかります。
大口径スピーカーの余裕と、クラシックな真空管アンプの飽和感が生み出す、不思議で魅力的なトーンはSuper Apricot ODでも味わうことができるのです。DRIVEコントロールやギターのVOLUME、手元のピッキングで容易にゲインをコントロールし、すぐにクリーンまで戻すことができます。しかし、そのクリーンにもどこか飽和感があり、まさに“ホットなクリーン”となります。
一方、DRIVEを高くして強くピッキングをすることで強く歪ませることができます。しかし、その歪みはクリーントーンのような解像度が備わっています。
そして、コンプレッションや飽和感と共に、常にあるコンボアンプ特有のレンジ感。オープンバックキャビネット特有の倍音成分の潰れ感が加わります。Super Apricot ODは、まさにリアルなアンプサウンド。ロックの核となったトーンがここに存在します。
Super Apricot OD(SAOD)は、ロックンロールの夜明けを感じるミディアムゲインを作る、ダイナミックなAIABだ。ストリングの震えでゲインをコントロールできるので、常時ONにして使うことも出来るだろう。リズムからリードまで、ギタートーンの基本として使うプリアンプとしても有効だ。SAOD1台でソロアルバムを作ることができるだろう。
前段にバッファを置いてもサウンドに影響しないから、他のペダルと組み合わせることも出来る。とにかくダイナミクスを楽しんでほしい。
───Bjorn Juhl
それでは動画での設定を解説します。
Basic Setting [0:03〜0:49]
まずはDriveとTrebleを12字方向にした基本的セッティング。
Volは少し上げアンプをプッシュしました。
ゲインは低めで、とても自然な感じに音が太くなるのが特徴です。
ピッキングへのレスポンスが高く、「弱く弾けばクリーン/強く弾けば歪む」というアンプライクな歪みペダルの特性をわかりやすく感じさせる反応性を持っています。
歴代のOne Controlの歪みペダルの中では最もコンプ感が少ないモデルかも知れません。
Sound Check [0:50〜1:09]
ノブを動かしながらのサウンド・チェックです。
まずスイッチをオンにした時のナチュラル感が特徴的です。
オン/オフで勿論音は変わるのですが、原音に対して実に自然なかかり具合です。
Driveは最小付近でほぼクリーン、12時あたりから粒が粗めのサチュレーションが加わり、3時以降では倍音感・飽和感の強いジャリッとした歪みになります。
Trebleは高域の強さを加減します。低域の量感への影響が少なく、音の明るさを調整するような効き方です。
Mellow Tone [1:10〜1:46]
Trebleを絞り切り、Driveも低めにした設定です。
少しだけ歪んだメロウなトーンで、ジャズにも合いそうです。
いつもながらTrebleの設定幅が絶妙に実用的だと思います。
このクリーンかつ自然なサチュレーションと太さを感じさせるトーンは個性的だと感じました。
Bright Crunch [1:47〜2:24]
Trebleを最大にした設定です。
この設定でもギラつかず太さを保ったトーンです。
ストロークでは音の芯を増強し、アルペジオではあたたかさを加えるブースター的な効果が得られます。
Hot Rhythm [2:25〜2:44]
Driveを最大にした設定です。
歪み方が独特で、正に古いコンボ・アンプのような質感を持っています。
真空管アンプを思わせるナチュラルなサチュレーションに加え、キャビネットが音圧でビリビリ震えている時のような空気感があります。
「アンプ・イン・ア・ボックス」というカテゴリーにぴったりはまるエフェクターだと思いました。
Hot Lead [2:45〜3:02]
上記の設定から更にTrebleとVolを上げてリードを弾きました。
こちらもコンボ・アンプのボリュームを目一杯上げたような空気感があります。
この感覚を味わえるペダルは少ないんじゃないでしょうか。
臨場感をブーストするようなユニークな効果だと思います。
総評
立て続けに2種の「スプロ系」ペダルをリリースしたブランドは初だと思います。
「スプロ系」と括るには数が少ないのですが、JHS Pedals Superboltや本家Supro Driveなどいくつかの製品が存在しています。
傾向としてはマスター・ボリュームを上げると歪むタイプのコンボ・アンプ、その飽和感とダイナミクスを表現するペダル群だと思います。
さてこのSAODは原音に対してナチュラルな反面、歪みの質がオールドスクールである程度音色の傾向が決まってしまう面はあります。
他の歪みペダルと組み合わせた際にも独特の飽和感や太さが残るので、スッキリとした歪みを作るのは難しいかも知れません。
逆に言えば方向性が定まっているので、用途のわかりやすいエフェクターだと言えるでしょう。
先にリリースされたHBODとの違いについても触れておきましょう。
HBODは程良いレンジ感で音が凝縮されるような濃密な質感です。オーバードライブらしいコンプ感もあります。
対してSAODは音量を上げると共にレンジ感が広がり暴れていく印象です。コンプ感も反比例して少なめです。
公式説明にある「ジャジーな滑らかさとダークさのあるHBODと、ロックなSAOD」という文が上記の差を表現しています。
並べて弾き比べてみるとやはり別物で、共通点の方が少ないような気さえしてきました。
強いて言えばギターの美味しい帯域といえる色気あるミッドレンジが常に出ている事でしょうか。
おそらくHBODの方がオーバードライブとしての用途が広く、一般的に使いやすいのではないかと思います。
SAODの方はコンボ・アンプの質感を得る事にフォーカスされていて、より個性の強いペダルだと感じました。
かなり渋い所を狙った、ある意味玄人向けのエフェクターです。
クラシック・ロック志向の方には勿論、ジャズ・プレイヤーにも試して欲しいペダルです。