【4週連続レビュー#3】One Control Lemon Yellow Compressor
- 2016-05-21 (土)
ナチュラルなトーンを保ちながら幅広く使えるコンプ
今月は4週連続でOne Controlのエフェクターをレビューします。
Little Copper Chorus、Tiger Lily Tremoloに続く第3弾はLemon Yellow Compressorです。(機種名は公式ページへのリンクとなっています)
まずは動画をご覧ください!
One Control | Lemon Yellow Compressor [Designed by BJF]
Credit
- Music / Movie / Cast
- Jake Cloudchair
- Thanks to
- ミュージックランドKEY
- OKADA International Inc.
- Fujigen
- PURUS Picks
- corgi-corgi
コンプレッサーというエフェクトに何を求めるか。カッティングやスラップの歯切れの良さ、スライドプレイに不可欠なサステイン、音色全体のクオリティを高めるようなエンハンス的効果、リード時のブースター、伝説のヴィンテージペダルやヴィンテージスタジオ機器の復刻……そこには様々な使い方、スタイルによる違いがあります。
ところが、これほどスタイルの違いがあるにも関わらず、“名機”と呼ばれるコンプレッサーは限りがあります。
こと、ナチュラル系コンプレッサーというジャンルに於いて、世界中から絶賛されるコンプレッサー。BJFの制作するコンプレッサーは、どれも独特の立体感を持ち、その全てが音楽的で美しい。
One Control Lemon Yellow Compressorは、そんなBJFが設計を手掛ける新作コンプレッサーです。特にペダル型のコンプレッサーを語る時、そこには大きく分けて2つのタイプがあります。それは“ナチュラル”か“エフェクティブ”か。Lemon Yellow Compressorは間違いなくナチュラルなコンプレッサーです。
これまでBJFが設計してきた数々のコンプレッサーと比較しても、そのナチュラルさは突出していると言えるほど。良質なスタジオ機器に迫るようなクリアなトーンを作ることができます。
しかし、Lemon Yellow Compressorの本質はここから。BJFの設計するコンプレッサーに共通すること。それは“コンパクトエフェクターらしいコンプレッサー”であることです。
まるでヴィンテージスタジオ機器のような立体感と暖かさを持ちながら、同時にスタンダードなコンパクトペダルのようにスタイルや音色に合わせ、簡単にコントロール出来る。つまり、ナチュラルなトーンを維持したまま、エフェクティブに使うことが出来る。このバランス感こそ、Lemon Yellow Compressorの真骨頂です。Lemon Yellow CompressorのGainノブとVolumeノブは、出力音量を可変します。Gainを上げれば全体のコンプレッションも強くなり、Volumeは本格クリーンブースターからレベルカットまで可能。最大で+18dBまでの出力により、リード時のブースターとしても最適です。
音色にコンプレッションを加えつつアンプや歪みペダルをプッシュすれば、クリーンブースターよりも迫力のある歪みを作ることもできます。Ratioは1:1~5:1まで、コンプレッションの強さを自在にコントロールします。常にナチュラルなトーンが特徴のLemon Yellow Compressorですが、RatioとGainを最大に設定すると軽いオーバードライブをかけたような音色を作ることも可能。音色全体の“圧”を調整するような使い方もできます。
さらに、Lemon Yellow CompressorにはCompモードとSustainモードをスイッチで切替えられます。
Sustainモードでは特にシグナルの弱い部分にコンプレッションをかけることでロングサステインを得ることができます。スライドギターでは、コンプレッサーは不可欠だと言われます。中でもナチュラルに音を伸ばすことの出来るコンプレッサーを求めるスライドギタリストは多いです。Lemon Yellow Compressorはそんなスライドギタリストに取っても理想的なコンプレッサーの1つとなることでしょう。
さらにベーシストにとっても、ベーストーンを壊さないナチュラルなコンプレッサーは有用です。Lemon Yellow Compressorは、そのナチュラルでクリアなトーンから、クリーンブレンドを設定せずとも簡単にベース本来のトーンを活かしたサウンドを作ることができます。また、RatioやGainを上げれば独特のブリブリとしたオーバードライブを作ることもできます。
Lemon Yellow Compressor(LYC)は特にナチュラルなコンプレッサーだ。ラウドなプレイでもクリアさを失わないイリュージョンを体験できるだろう。スライドプレイでもありがたい存在となる。
Sustainモードでは、コンプレッサーをかけていることを忘れるほど簡単にプレイニュアンスを表現できる。
───Bjorn Juhl
解説
それでは動画の詳細について解説します。
それぞれの音色で、まずLemon Yellow Compressor (以下LYC)をオフの状態で弾き、その後オンにして同じフレーズを弾いています。
使用機材
デモで使用した機材は下記リストの通りです。
- ギター
- FGN NST200
- FGN JIL-AL-R-HH
- FGN EFL-FM (with DeMont PU)
- アンプ
- Koch Studiotone 40XL Head
- ベース
- Fujigen NJB200
- Gain
- 12 (時方向)
- Level
- 1
- Ratio
- 12
- Mode
- Comp
- Gain
- 2
- Level
- 12.5
- Ratio
- 10
- Mode
- Comp
- Gain
- 3
- Level
- 1
- Ratio
- 3
- Mode
- Comp
- Gain
- 3
- Level
- 12
- Ratio
- 5
- Mode
- Sustain
- Gain
- 5
- Level
- 2
- Ratio
- 5
- Mode
- Sustain
- Gain
- 5
- Level
- 1
- Ratio
- 12
- Mode
- Sustain
- 【4週連続レビュー#2】One Control Tiger Lily Tremolo
- 【4週連続レビュー#1】One Control Little Copper Chorus
- One Controlベース用ペダル動画3本公開 – feat.根岸孝旨
Basic Comp
GainとRatioを12時にした設定です。Levelはオフ時と同じくらいの音量にする為、1時にしています。
オンにした途端、輪郭がはっきりとして歯切れが良くなります。とにかく1音1音が立って聴こえます。
ブラッシングが素直に持ち上がるのでカッティングにぴったりですね。
Natural Comp
Ratioを控えめにした設定でアルペジオ主体の演奏をしました。
自然なコンプレッションで素直にサステインが伸びているのがわかると思います。
ここではSea Turqoise Delayで8分音符のディレイをかけて空間を演出しました。
(製品名は当ブログ内のレビューへのリンクになっています)
for Bass Guitar
ベース用としても使えるとの事なので試してみました。私がデモ動画でベースを弾く映像は始めてになりますね。
基本の音作りはCrimson Red Bass Preampで太さを加えた後にHooker’s Green Bass Machineでエッジ感を出しています。
LYCをオンにすると輪郭がくっきりとして前面に出てきます。音色的に極端な差は無いのですが、格段に演奏しやすくなります。
for Slide Guitar
こちらもデモ動画で演奏するのは始めての、スライド・ギターです。
フジゲンにお願いしてスライド仕様に設定してもらったFGN JIL-AL-R-HHを使用しました。
LYCにはCompモードとSustainモードを切り替えるスイッチがあります。ここまでの3音色ではCompモードでしたが、ここからはSustainモードに替えています。
ここではRatioを最大にした設定でサステインを稼いでいます。強めの設定ですが、アタックや減衰感など音色への変化は違和感を感じさせません。
圧縮感少なめの音色でサステインを伸ばすという、ある意味矛盾した効果を実現していると思います。
Pushing an Amp
RatioとGainを最大にしました。ほぼクリーン・トーンに設定したアンプを、クランチ程度に歪ませる事が出来ました。
更にLevelを上げれば、オーバードライブに近いくらいまで歪ませられます。
ナチュラルなサチュレーションでエッジがあります。ニュアンスも増幅されますし、リード用のブースターとしても実用的です。
with Overdrive
オーバードライブの前段に繋いでゲインをプッシュする使い方です。
Strawberry Red Over Driveで歪ませ、更にLYCでプッシュしました。
Gainを上げる事でエッジ感が増し、音圧も上がります。歪み感はあまり増やさずに、自然にサステインを伸ばす事が出来ます。
他にもディストーションと組み合わせれば更に迫力ある音色を演出できると思います。
総評
晩成のコンプレッサー。
One Control史上最長の開発期間を経て、
One Control Lemon Yellow Compressorは出来上がりました。最初のプロトタイプは1ノブタイプのとてもシンプルなもの。
私たちはすでに満足いく出来と感じましたが彼はその出来を許そうとしませんでした。そしていくつかの改良を経たのちに出来上がったプロトタイプ、2ノブバージョン。
すでに製品として間違いのない出来と思いましたがまだそれを許さず
開発は継続されます。そして出来上がった3ノブ+スイッチバージョン。
商品が発売されるまでに3回以上のモデルチェンジを繰り返し、
ついにそれは姿を現します。遠い目標を持ち、そこから一歩も目線を外すことなくたどり着いた高みに
私たちが見たものは、知識、常識にとらわれず自分の眼力のみによって
音を正しく理解しようと努力する彼の姿でした。すでにこのペダルはサイズのハンデを完全に乗り越え、
優雅にプロフェッショナルな音を奏でています。この高みの音に、皆さんは何を見ますか?
上記は公式説明文からの引用です。
しばらく前になりますが、実は1ノブタイプのプロトタイプも私の元に届いていました。
プロトタイプもかなり良い音色でしたし、1ノブのコンプという事でインパクトのあるモデルでした。
しかし改良を繰り返した末の製品版はレベルの違う完成度に仕上がっていると感じました。
実に自然に、そして効果的にコンプレッションを加えるペダルです。
色付けの少ないコンプレッサーをお探しの方には特にお薦めしたいエフェクターです。
来週金曜にまた動画を公開します。お楽しみに!