【4週連続レビュー#2】One Control Tiger Lily Tremolo
- 2016-05-13 (金)
有機的で生々しいトレモロサウンド
今月は毎週金曜にOne Controlのエフェクターをレビューします。
先週のLittle Copper Chorusに続いて紹介する第2弾は、Tiger Lily Tremoloです。(機種名は公式ページへのリンクとなっています)
まずは動画をご覧ください!
One Control | Tiger Lily Tremolo [Designed by BJF]
Credit
- Music / Movie / Cast
- Jake Cloudchair
- Cinematography by
- Yusuke Maehara
- Thanks to
- ミュージックランドKEY
- OKADA International Inc.
- Fujigen
- PURUS Picks
One Control Tiger Lily Tremoloは、初期のチューブパワーアンプを利用するトレモロエフェクトのサウンドを再現しながら、現代的でクリアな、高解像度のトーンを両立させたトレモロエフェクトです。
多くの“生真面目な”トレモロエフェクトは、音量を綺麗に上下させたり、より激しいトレモロエフェクトをかけるために、LFOを三角波(トライアングル)や矩形波(スクエア)に設定してしまいます。
ヴィンテージトレモロエフェクト特有の“ジェントル”な響きは、正弦波でなければ生まれません。Tiger Lily TremoloのLFOは、かつてのヴィンテージアンプに使用されたものと同様、正弦波を生成します。
Tiger Lily Tremoloの、浅くかければ緩やかで滑らかなトレモロエフェクトを作り、深くかけてもプレイを妨害しないという独特の質感も、このLFOの働きが大きいのです。
もちろん、ただLFOを正弦波に設定すれば即座にヴィンテージトーンが得られるわけではありません。三角波や四角波と比べ、正弦波を自在に制御するのは難しいためです。それが“ソフトなトレモロ”で終わるのか“極上のヴィンテージトレモロ”の領域にまで立ち入れるのか、そこがまさにセンスの見せ所です。
Tiger Lily Tremoloは、BJFのセンスと耳を駆使したチューニングが施されています。まるで1つ1つの揺れが生きているような、有機的で生々しいトレモロサウンドです。そして、Amplitudeノブにより、その波形をさらに細かくコントロール可能。Amplitudeノブを低く設定すれば全く揺れを無くすこともできます。この時、軽いブーストと共にほんの少しだけ暖かな音色を作ることができます。Amplitudeを上げていくと、連続的なトレモロからより激しいトレモロサウンドへと変わります。
AmplitudeノブとDepthノブの設定と組み合わせることで様々なトレモロサウンドを作ることができます。Tiger Lily Tremoloはヴィンテージトレモロエフェクトを再現していますが、何から何までを完全再現したわけではありません。例えばヴィンテージチューブパワーアンプを使用するトレモロは基本的に正弦波のトレモロエフェクトですが、ドライバーが飽和すると四角波に近づきます。
それは間違いなくヴィンテージトレモロならではの味わいの1つですが、同時に扱いにくい部分とも言えます。
Tiger Lily Tremoloは広いダイナミクスレンジとヘッドルームの高さにより、常に正弦波のトレモロを維持します。このことが、ヴィンテージトレモロエフェクトのサウンドを再現しながら、同時に現代的な高い解像感を両立させています。
現代のアンプ、現代のスタジオ機器の高い音質の中で浮いてしまうことも無く、同時に他のトレモロペダルには無い存在感も両立させる。BJFの感性が生み出したトーンです。
現代のシーンで積極的に使うことはもちろん、今の機材を使ってのサーフミュージックにも最適です。さらに、Tiger Lily Tremoloは、その音質にもBJFならではのチューニングが活きています。クリアでありながら柔らかく、高解像度な質感。Amplitudeノブを低く設定して揺れをなくせば、ソフトなトーンを作るバッファ/プリアンプのようにもご使用いただけます。
また、Tiger Lily TremoloにはPHASEというスイッチを搭載しています。PHASEスイッチを切り替えると、位相を反転させ、アウトプットインピーダンスを下げることが出来ます。
基本的なエフェクトの音色はほとんど変化しませんが、エフェクトループやスタジオ機材などと組み合わせて使用する際には重要なスイッチです。実際に音を出し、ご自身の耳で良いと感じたモードを選択してみてください。
初期設定ではPHASEはOFFになっています。●特徴
・ヴィンテージアンプに搭載された、最初期の正弦波トレモロサウンドを再現
・単に古い音を作るだけでなく、現代的な高い解像感を両立
・波形を微調整できるAmplitudeコントロール
・様々な機材やルーティングに合わせたPHASEモードを搭載
・アルミ削り出しのハイクオリティなミニサイズケース
・電池内蔵も可能
・トゥルーバイパススイッチング
1981年に私の作ったペダルを初めて販売したのだが、それがトレモロだった。そしてそれは初めてギタリストのために作ったエフェクトだった。そのギタリストは今でもそのトレモロを持っているよ。
トレモロはいろいろなスタイルの音楽で使用されている。有名なマシンガンのような派手な効果だけでなく、バックでゆっくりと音を揺らしたり、偽エコーのような使い方をするプレイヤーも知っている。
Tiger Lily Tremolo (TLT)は、私が作った最初のトレモロを元にモディファイを施したバージョンだ。電池でペダルを使うのが当たり前だった時代の設計を受け継いでいるので、TLTは消費電流も少ない。ミニペダルで電池駆動ができるOne Controlにも最適だ。
つまり、TLTには非常に満足している。───Bjorn Juhl
解説
それでは動画の詳細について解説します。
使用機材
デモで使用した機材は下記リストの通りです。
- ギター
- Xotic XS-2
- アンプ
- Suhr CORSO
- Koch Dummybox Studio/PA
- ベース
- Fujigen NJB200
- One Control Hooker’s Green Bassmachine
- Depth
- 10 (時方向)
- Amplitude
- 9.5
- Speed
- 1
- Depth
- 9
- Amplitude
- 12
- Speed
- 9
- Depth
- 12
- Amplitude
- 3
- Speed
- 5
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Mellow Tremolo
まずは個人的に使いやすく感じたセッティングです。トレモロの波形を程良い深さと柔らかさに設定しました。
このTiger Lily Tremolo (以下TLT) はDepthで揺れの深さを、そしてAmplitudeで波形を微調整します。
揺れ方のカーブが心地良く、立体的な感じもします。ゆったりしたフレーズを弾きたくなりますね。
プレイの邪魔にならない効き方が絶妙だと思います。
ここではPurple Humper, Persian Green Screamer, そしてPrussian Blue Reverbで基本的な音色を作った後にTLTを繋いでいます。(機種名は私が書いたレビューへのリンクになっています)
Soft & Slow
遅めのスピードで揺らしてみました。
ここではStrawberry Red Over Driveでクランチ程度に歪ませ、Sea Turqoise Delayで8分音符程度のディレイを薄くかけた後にTLTを繋いでいます。
公式説明に「ヴィンテージアンプに搭載された、最初期の正弦波トレモロサウンドを再現」とあるように、味わいを感じる音色です。
Fast & Deep
最後は最速のスピードで強めにかけてみました。
Little Green Emphaserでエッジ感をブーストした後にTLTを繋ぎ、Anodized Brown Distortionで歪ませています。
リズミカルなトレモロを強く感じられるのと同時に、原音もしっかり聴こえています。音圧とうねりを演出できるので、ギター1本で厚みを出したい時に有効だと思います。
最後に打ち放したコードにかかるトレモロも心地良かったです。大音量で弾いてみたいですね。
総評
柔らかさを感じる効き方のトレモロです。クリアな音色を保ちつつあたたかさを加えるという意味で、同社のLittle Copper ChorusやSea Turqoise Delayに通づるものがあると感じました。
One Controlのペダルも増えてきましたが、空間系に関しては「クリアでやわらかい」というのがこのブランドの方向性なのかなと思います。どれも使いやすいエフェクトです。
ツマミの効きが実用的な幅に設定されているので、ポイントも探りやすいです。その反面、極端な音は出ないので物足りなく感じる人もいるでしょうね。
人によっては地味なペダルかも知れませんが、絶妙な効き方で奥深いトレモロだと思います。
来週金曜にまた動画を公開します。お楽しみに!