Phantom fx “HACK” サウンド・クオリティを底上げするポスト・ブースター
- 2023-05-24 (水)
絶妙なエンハンス効果と音質補正を担うブースター
ギタリスト戸高賢史が主宰するエフェクター・ブランドPhantom fxからリリースされたブースト・ペダル “HACK”を紹介します。
今年2月に行われたイベントにて発売されたこの”HACK”、私もその場で戸高氏から直々に説明を受け試奏し即気に入りました。
紹介動画を制作しましたので是非ご覧ください。
Phantom fx “HACK” [Booster]
使用機材
- ギター
- FGN NST200
- FGN NSG100
- ギター・アンプ
- IK Multimedia TONEX Pedal :(使用モデル:Fender Deluxe Reverb)
- 併用エフェクター
- BOSS SD-1
- ProCo RAT
- Electro Harmonix Ram’s Head Big Muff Pi
- BOSS BD-2
- Vemuram Myriad Fuzz
Phantom fxが考える、ペダルユーザーに向けたブースターペダル。併用するペダルの音抜け、太さ、質感の高さを補填し、ポテンシャルを最大以上に引き出すことを目的として作られています。
筐体表面の上部にある3つのノブは、左から順に“Bass”、“Boost”、“Treble”のコントローラー。どのノブも12:00方向でおおよそユニティとなり、そこから反時計回り方向でカット、時計回り方向でブーストが可能です。現在使用しているペダルの後段に配置し、BassやTrebleをブーストすれば、まるでそのペダルが元来持っていたかのような自然な太さ、音抜けが足され、カットしてもやはり自然に落ち着いた音に帰結します。
イコライザーなどのエフェクトも同じく低域や高域を操作できるとはいえ、HACKが作る音に古典的なイコライザーのようなケミカル感は一切なく、あくまでも併用するペダルが元々具えていた音の延長と感じられるような、非常に自然な音作りができるのです。
HACK自体の入力部分は歪みにくく、Boost量も十分であるため、ペダルの後段に繋ぐことで不要な音の荒れ、潰れが起きることなく、良質で優秀なブースターとして機能します。
とにかく不要な帯域が出にくく、プレイヤーが欲する帯域だけを持っているためか、ペダルや歪んだアンプの前段に配置し、ゲインをブーストするにも非常に秀逸です。TrebleやBassをブーストしても破綻がなく、逆にカットすることで後段の機材をプッシュするに最適な信号を強く送り出すことも可能です。
ブーストとは逆に、音量をユニティからさらに下げることもできるため、何らかの理由で音量を下げたい場合にも活用できます。
レビュー
この”HACK”は2バンドのトーン・コントロールを備えたブースターです。色々と使い途が考えられますが、歪み系ペダルの後段で音質・音量を補正する用途で特にその効果を発揮します。動画ではその特性を強調してわかりやすく伝えるべく、他のエフェクターの後段に”HACK”を繋いでオン/オフを繰り返し、効果を聴き比べる内容にしました。
マイルドなオーバードライブの輪郭を際立たせる [演奏箇所0:28~1:39]
BOSS SD-1で軽く歪ませたトーンに対し”HACK”の”Bass”と”Treble”を少し上げた設定です。高域が伸びて輪郭が際立ち、低域の押し出し感も増して音が元気になる印象です。前段に繋ぐペダルがギター・ヴォリュームを下げた際にクリーンに出来る機種/設定であれば、そのダイナミクスを活かしたまま”HACK”で補正する事も可能です。
トーン・コントロールによるサウンド・ヴァリエーション [1:40~2:23]
ProCo RAT(動画で使用したのは1986年製)で作ったディストーション・サウンドを”HACK”で補正する例を3つ並べてみました。”Bass”と”Treble”の設定により「フラット/明るめ/暗め」に補正し、音量差を”Boost”で調整しています。設定により結構印象が変わるのがわかります。基本的な音質補正は勿論、局所的に雰囲気を変える用途にも使えます。
トリマーを連動させたファズ・サウンドの補正例 [2:24~3:28]
Electro Harmonix Ram’s Head Big Muff Piで深めに歪ませたトーンに対してリズム用およびリード用にそれぞれ”HACK”の設定を変えてみました。”HACK”には内部に”Low-Mid”トリマーがあり、この動画では基本的に真ん中に設定しているのですが、このパートではリズム時に最小/リード時に最大にしています。まずリズム・サウンドに対してはドンシャリ系の設定にし、重さを強調しつつ鋭さも付加しました。リード・サウンドでは”Bass”をかなり下げて重さを減らし、”Low-Mid”で中域を盛り上げました。
各ノブと内部トリマーの挙動を確認 [3:29~4:01]
“Bass”, “Treble”, “Boost”そして”Low-Mid”を操作しながら効果のかかり具合を確認しました。このパートでは他のエフェクターを併用せず、ギターとアンプの間に”HACK”のみを接続しています。開発したトディ曰く「クリーンな音に対しては少しFenderっぽいニュアンスが作れる」との事で、その効果も表れているかと思います。
鋭さを強調する設定 [4:02~4:23]
BOSS BD-2で作ったクランチ・サウンドに対し”HACK”で高域を上げる設定です。アルペジオの各音の分離感が向上し、より生々しいトーンになります。動画冒頭でのバッキングもこの設定で、リードは次に紹介する設定です。
リード・サウンドの音抜けを向上させる [4:24~]
最後にVemuram Myriad Fuzzで作ったトーンを”HACK”でブラッシュアップしました。”Bass”を少し削って低域をタイトにし、”Treble”は上げて音抜けを良くします。各音がよりくっきり聴こえニュアンスも強調する効果が得られます。終盤では”Myriad Fuzz”の優れた反応性を活かしギターのヴォリュームを絞って鈴鳴りトーンにしていますが、ここでの”HACK”はその反応性を邪魔する事なく寧ろ引き立たせています。
さて、”HACK”の使用例を紹介しました。手持ちのシステムの「あと一歩」なポイントを補正しサウンド・クオリティを底上げしてくれる頼もしいアイテムだと思います。今回は基本的にあまり音量を増減しない設定にしましたが、アンプをプッシュしたり逆にレベルを下げてヘッドルームを確保したり、または敢えて歪みペダルの前段で補正する等、ここで挙げた以外の可能性も秘めています。人気機種の上に生産数が少なく購入の機会は限られますが、運良く入手できた方は是非このペダルのポテンシャルを掘り下げてみてください。
今回の動画ではギター・アンプとしてIK Multimedia TONEX Pedalを初めて使用しました。今年春に発売されて以来大人気で未だ品薄のTONEX Pedal。まだペダル紹介動画などで使われる機会は少ないと思いますが、そのサウンド・クオリティの高さからレビュー用機材として採用を決めました。TONEX Pedal(+外部エフェクター)のサンプル音源としても今回の動画を参考にしてもらえたらと思います。