【最速レビュー】Sinvertek NO.5 Distortion
- 2015-03-12 (木)
個性的な多機能ディストーション
2015年1月のNAMMで発表されたディストーション“NO.5”を紹介します。
中国のブランドSinvertekによるエフェクターです。
Webに掲載されたこのペダルの写真をたまたま見た私は、強い興味を覚えました。
その後、運良くメーカーと直接やり取りする事が出来まして「是非弾かせて欲しい」とリクエストした所、
「まだ正式販売前で在庫が無いので」とことわりながら、なんとNAMMに展示されていた現物を送っていただきました!
シリアル・ナンバー#0という貴重な個体です。
早速デモを制作しました。
まずは動画を是非ご覧ください!
NO.5 Distortion by Sinvertek
- Music / Movie / Cast
- cloudchair
- Cinematography by
- Yusuke Maehara
- Thanks to
- Magneto Guitars
- Scorelay Japan
- PURUS Picks
- One Control
- ヒズミ屋
仕様
- チューブ・アンプを完全に再現した周波数特性やダイナミクスへの反応
- ディスクリート・コンポーネント・デザイン
- 2種のディストーション・レベル、ハイ・ゲインとウルトラ・ゲインを切り替え可能
- 4バンドEQ:ベース、ミッド、トレブル、プレゼンス
- 3ウェイ・ミッド・フリーケンシー・セレクト・スイッチ / 3ウェイ・ピッキング・アタック・セレクト・スイッチ
- 4種の操作モード:ノーマル / ゲイン・ブースト / ボリューム・ブースト / ゲイン&ボリューム・ブースト
- トゥルー・バイパス
Description
- The Frequency Response Curves, The Touch Sensitivity and Picking Attack & The Perfect Dynamic Response Perfectly Accordant with the Tube Amp.
- Design of Discrete Components Circuit and Frequency Response Network.
- Two Distortion Level, Hi-Gain and Ultra-Gain.
- EQ: Treble, Bass, Mid and Presence.
- 3way MID Frequency Select Switch / 3way Picking Attack Select Switch.
- 4 Operation Modes: NORMAL,GAIN-BOOST,VOL-BOOST,GAIN & VOL-BOOST.
- Relay True Bypass
デモの設定とレビュー
上記デモ映像で使った機材は、ギターがMagneto GuitarsのSonnet。
前回紹介したSviSounc MetalZoid mz07と同様に、スコアレイ・ジャパンのご協力により使用させていただきました。
ヴィンテージ・テイストを持つヴァーサタイルなギターです。
アンプはFender Twin Reverb。
そして木製ハンドメイド・ピックPURUS Picksのオリジナル・モデルを使っています。
Parameters
独特なレイアウトのコントロールについて簡単に説明します。
- Volume / Gain
- 最上部にある2つのノブは、一般的な音量と歪み量のコントロールです。
- Mid / Bass / Treble / Presence
- 4つの小さなノブは4バンドEQです。
- Mode Switch
- VolumeとGainの間にあるミニ・スイッチは2種類の機能を持っています。操作時は上下に動かし、自動的にセンターに戻る仕様です。
短く上に動かすとハイ・ゲイン、下に動かすとウルトラ・ゲイン、と2つのゲイン・レベルを切り替えます。
長押しすると操作モードを切り替えます。モードについての説明は下に別記します。 - Mid Range
- 3ウェイのミニ・スイッチで、中域のキャラクターを選択します。
- Top End
- Mid Rangeと同じく3ウェイのミニ・スイッチです。ピッキング・アタックに影響する高域の質感を選択します。
4つの操作モードと設定方法
- ノーマル・モード
- 電源を入れた時点ではこのモードです。フットスイッチを踏む度にオン/オフを切り替える一般的な操作です。
- ゲイン・ブースト・モード
- Mode Switchを上方向に長押しするとこのモードになります。
フットスイッチを踏む度にハイ・ゲインとウルトラ・ゲインを切り替えます。
なお以下を含むブースト・モード時には、フットスイッチをダブル・タップする事でオフになります。 - ボリューム・ブースト・モード
- Mode Switchを下方向に長押しするとこのモードになります。
ノーマル・ボリュームとブースト・ボリュームを切り替えます。
ボリュームのブースト量は固定されています。 - ゲイン&ボリューム・ブースト・モード
- まずゲイン・ブースト・モードにした後に、Mode Switchを下方向に長押しするとこのモードになります。
フットスイッチを踏む度にハイ・ゲイン&ノーマル・ボリュームとウルトラ・ゲイン&ブースト・ボリュームを切り替えます。
それではデモでの設定を紹介しながらレビューしていきます。
Basic Setting
- Volume
- 12 (時方向)
- Gain
- 12
- Gain Type
- H.G
- Mode
- Normal
- Mid
- 12
- Bass
- 12
- Treble
- 12
- Presence
- 12
- Mid Range
- L
- Top End
- N
まずは全てのノブを12時方向に、ミニスイッチをセンターにした標準セッティングです。
チューブ・アンプの歪みを思わせるナチュラルなトーンです。
歯切れが良く、明るい印象を受けます。
Volume Boost
- Volume
- 12
- Gain
- 12
- Gain Type
- H.G
- Mode
- Vol Boost
- Mid
- 12
- Bass
- 12
- Treble
- 12
- Presence
- 12
- Mid Range
- L
- Top End
- N
“Basic Setting”と同じ設定のまま、ボリューム・ブースト・モードに切り替えました。
ストレートなブースト効果で、音量と共にレンジも広くなるように感じます。
タッチのニュアンスがよく出て、実に抜けの良いトーンです。
Dynamic Crunch
- Volume
- 3
- Gain
- 8
- Gain Type
- H.G
- Mode
- Normal
- Mid
- 12
- Bass
- 1
- Treble
- 12
- Presence
- 9
- Mid Range
- M
- Top End
- P2
ローゲイン設定です。このパートではネック・ピックアップを使用しています。
ここではダイナミクスへの反応の良さを感じていただけると思います。
冒頭ではギターのボリュームを5程度にしてアルペジオを弾いています。こもらず分離の良い、使えるクリーン・トーンになります。
そして途中からボリューム全開でカッティングを弾きました。この少し歪み始めるくらいのトーンにも色気を感じます。
Soft Distortion
- Volume
- 2
- Gain
- 9
- Gain Type
- H.G
- Mode
- Vol Boost
- Mid
- 5
- Bass
- 2
- Treble
- 9
- Presence
- 9
- Mid Range
- M
- Top End
- P1
ゲイン低めの設定でボリューム・ブーストさせました。ここではミドル・ピックアップを使用しています。
アンプライクでナチュラルな歪みです。
太くて粘り気がありつつも抜けが良いトーンです。
High-Gain / Ultra-Gain
- Volume
- 12
- Gain
- 2
- Gain Type
- H.G / U.G
- Mode
- Normal
- Mid
- 11
- Bass
- 2
- Treble
- 3
- Presence
- 1
- Mid Range
- L
- Top End
- P2
所謂ブラウン・サウンド的なトーンを設定してみました。
Top EndをP2にして歪みを多めにすると、高域が強調されメタリックなエッジ感が出てきます。
このペダルはハイゲイン・チューブ・トーンを目指して設計されたようで、この音色を聞くとマーシャルの発展形のように感じます。
途中でゲイン・レベルをH.G(ハイ・ゲイン)からU.G(ウルトラ・ゲイン)に変えています。
歪み量や音質に極端な差はなく、ギター・アンプでいえばゲインが2〜3目盛り分上がったような感じだと思いました。
なお動画の中ではModeスイッチを操作してゲイン・レベルを切り替えていますが、あらかじめゲイン・ブースト・モードに設定しておけばフット・スイッチでこの操作が可能です。
Smooth Lead
- Volume
- 1
- Gain
- 1
- Gain Type
- H.G
- Mode
- Vol Boost
- Mid
- 5
- Bass
- 5
- Treble
- 7
- Presence
- 12
- Mid Range
- L
- Top End
- N
Trebleを絞り切り、中低域をブーストした設定です。
若干極端な設定にしてみたつもりですが、聞いての通り実用的な音色になりました。
各トーンの可変幅は使える範囲に絞って設定されているように感じます。
Mid Scooped
- Volume
- 12
- Gain
- 3
- Gain Type
- U.G
- Mode
- Normal
- Mid
- 7
- Bass
- 3
- Treble
- 5
- Presence
- 5
- Mid Range
- M
- Top End
- P1
中域をカットした所謂ドンシャリの設定で、ウルトラ・ゲインにしてモダンな音作りをしてみました。
深い歪みでザクザク感も強いです。厚みがありレンジも広いですが、歯切れの良さを失わず、どこか軽やかさを感じさせるようなタイト感があります。
その分、箱鳴り的なローエンドは抑え気味に感じます。この特徴を「迫力に欠ける」と取るか「すっきりして使いやすい」と取るかは好みの分かれる所かも知れません。
Volume & Gain Boost
- Volume
- 1
- Gain
- 5
- Gain Type
- U.G
- Mode
- Gain & Vol Boost
- Mid
- 1
- Bass
- 7
- Treble
- 5
- Presence
- 12
- Mid Range
- H
- Top End
- P1
Gainを最大にした設定です。
ここでは抜けの良さを強調すべくBassを絞り切りましたがスカスカになる事はなく、やはり実用的な効き方のトーンです。
レガートや速いピッキングを織り交ぜた演奏ですが、どの弾き方でもなめらかに音が繋がり粒立ちが良いです。
かなり歪んでいるのですが、ナチュラルな質感を失わない点が秀逸だと思います。
総評
最初に写真を見た時に感じた「モダンで多機能なディストーション」という印象はある意味正しかったです。
特に操作モードを切り替えられる機能は、歪みペダルの新たなスタイルを提案しています。
ただ個人的に良い意味で予想を覆されたのは、機能よりも音質でした。
「ウルトラ・ゲイン」という記述から当初はモダンなハイゲインなペダルを想像していましたが、
確かにゲイン幅は広いものの、むしろあたたかさを感じさせるナチュラルなトーンが持ち味のペダルです。
なんといってもダイナミクスへの反応の良さは正にアンプライクと言えます。
4バンドEQやミニ・スイッチも実用的な効き方で、音作りしやすいと感じました。
ただ4バンドEQはノブが小さく目盛りも判別しにくいので、まめな調整は若干面倒に感じるかも知れません。
(動画内では設定が見えやすいよう、目盛り部分を白く修正しています)
ノブが小さい分、知らないうちに動いてしまう心配が少なくなるという良い面はあります。
アンプ的な歪みを作るコントロールが揃っている反面、無機質で極端な音作りには不向きとも言えます。
特にエクストリームなメタルやジェント等に求められる、強烈な低域やミッドスクープという要素は弱めです。
かなりノイズが少ないのも特筆すべき点です。
ただ電源に関しては個別の9Vアダプターか独立レギュレート式のパワー・サプライを使用しないと、電源ノイズが乗る場合があります。
電源を分岐ケーブルで分配する際にアナログとデジタルのエフェクターが混在していると起こる問題ですね。
NO.5 Distortionのシグナル・パスはアナログなのですが、モード切り替えにデジタルを用いたハイブリッド仕様の為、上記の問題が起こる可能性があります。
ちなみに電池駆動は出来ません。
多彩なコントロールを備えた多機能なディストーションです。
そして最大の魅力はクオリティの高いアンプライクな音色です。
色んな機能は必要ないという方にも、この歪みのトーンは強くお薦め出来ます。
アンプライクでヴァーサタイルな歪みをお求めの方には是非。
※NO.5 Distortionは現時点(2015年3月)では正規販売前で、今後の国内販売は未定です。
追記:
2016年12月から日本での販売も決まった模様です。
参考ページ:http://blog.ksound.jp/article/444658558.html
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