Variax HD 登場
- 2013-08-30 (金)
先進的ギターが更に新次元へ
Line 6製ギター『James Tyler Variax』(以下“JTV”)。
デジタル・モデリングという技術を用いて、ヴィンテージやアコースティックを含む様々なギターの音色を表現するギターです。
最新技術が詰め込まれたこのギターには、デジタルならではの利点がいくつもあります。
そのひとつが「アップデート」です。
まるでPCやスマートフォンのアプリを更新するように、ギターのファームウェアをアップデート出来るのです。
先日、大幅なアップデートがリリースされました。
PCに例えるなら、OSの名前が変わるくらいのメジャー・アップデートといえます。
それが『Variax HD』です。
このアップデートは無償で提供されています。
自分の持っているギターの機能や音質がネットワーク経由で変化・向上するという、正に先進的な楽器です。
私は初代モデルに出会いその魅力に気付いて以来数年間、このVariaxというギターを使い続けています。
『JTV-69』を入手してからは、このギターが私のメインの楽器となりました。
この楽器に慣れ親しんできた経験を活かして、今回のアップデートについて、そして改めてVariaxの機能について紹介します。
より高品位で繊細な表現に
『Variax HD』は以下のギターをモデリングしています。
- エレクトリック・ギター・モデル
- 1960年製Fender Telecaster Custom
- 1959年製Fender Stratocaster
- 1959年製Gibson Les Paul Standard
- 1976年製Gibson Firebird V
- 1955年製Gibson Les Paul Special
- 1959年製Gretsch 6120
- 1959年製Gretsch Duo Jet
- 1966年製Rickenbacker 370
- 1966年製Rickenbacker 370-12
- 1961年製Gibson ES-335
- 1964年製Epiphone Casino
- 1954年製Gibson ES-175
- 1953年製Gibson Super 400
- アコースティック・ギター・モデル
- 1959年製Martin D-28
- 1970年製Martin D12-28
- 1967年製Martin O-18
- 1966年製Guild F212
- 1995年製Gibson J-200
- その他、特殊なモデル
- 1999年製Jerry Jones Shorthorn
- 1935年製Dobro Model 32
- Coral Sitar
- Gibson Mastertone Banjo
- 1928年製National Tricone
これらのモデルは『HD』以前と同じものを基本としていますので、
既にVariaxを使っている人であればすぐに、音質の変化を感じると思います。
それでは変化について具体的に書いてみましょう。
より生々しく、歯切れよく
“HD”という言葉は一般的に”High Definition”(高品位,高精細度,高解像度などの意)を略したものです。
この『Variax HD』は正に高品位な音質にグレードアップしたと感じます。
まず、音の輪郭がより繊細に表現されている事に気付きました。
具体的には、ピックが弦に当たった瞬間のアタック感。これはギターの音色を印象づける重要な要素です。
この感触がより生々しくなり、また歯切れの良さにもつながっています。
これは「EQでアタックの帯域を持ち上げる」ような事とは根本的に違う変化です。
「今までぼんやり見えていたものがクッキリする」、それこそ“HD”という言葉がしっくりくる変化といえるでしょう。
パームミュート時のザクザク感が向上
“ピッキング時のアタック感”の変化はどんな設定でも感じられると思いますが、特に「ディストーションを深くかけ、低音弦をミュートしてリフを刻む」時に顕著です。
このような場合には所謂『ザクザク感』が重視される事が多いのですが、以前のVariaxは『ザクザク感』が弱く、そこに物足りなさを感じる人が多かったようです。
今回のアップデートはメタル好きギタリストに強くアピールする、待望の変化だと感じました。
驚異的ローノイズ
ハイゲインで歪ませる場合、ピックアップのノイズが特に大きな問題になります。
EMGなどのアクティブ・ピックアップはローノイズという事でメタル系ギタリストに愛用者が多いですが、Variaxのノイズの少なさは正に別次元です。
是非この現代的ローノイズ・ハイゲイン・サウンドを体感して欲しいと思います。
また、このノイズの少なさは音の立体感や抜けの良さにも貢献しています。
抜けの良いキラキラ感
音質の変化は、深く歪ませた時は勿論ですが、クリーンやクランチで弾いた時にも十分体感出来ます。
ハリというかツヤというか、弦の響きがより立体的に聴こえてきます。
キラキラとしたブライト感が増した為、人によっては音が細くなったように感じるかも知れませんが、これまで現場で使ってきた経験から言うと、むしろブーミーさが減って使いやすくなりました。
以前はアルペジオ時などキラキラした音色が欲しい時に大抵テレキャスのモデルを選んでいたのですが、『HD』ではグレッチや335、ファイヤーバード等にも各モデル毎のキラキラ感が表れてきたので、個人的に選択肢が増えました。
出力レベル・トーンの適正化
『HD』アップデートでは、出力レベルにも変化を感じます。
以前のVariaxはどのモデルも出力が若干高めに設定されていたと思いますが、アップデート後は少し低めというか、標準的な音量に落ち着いたように感じました。
JTVには通常のマグネティック・ピックアップも搭載しており、モデリング・サウンドと切り替えたり、両方を同時に鳴らす事が可能ですが、今回のアップデートでピックアップとモデリングの出力のバランスが良くなりました。
そしてダイナミクスの表現もより高精細になっています。
フルボリュームで強く弾いた時は勿論、ボリューム・ノブを下げて弱く弾いた時のニュアンスも更に繊細に表現されるように思います。
あまり語られる事はなかったようですが、Variaxのトーン・ノブには独特の癖がありました。
トーンを回し切った所から少し絞ると、ミドルが持ち上がり音圧が増すポイントがあったのです。
私はこの癖をブースター的に、いわば裏技として使う事がありました。
しかし今回のアップデートでは、より素直でなだらかな変化のトーンとなり、前出のブースター的な癖は無くなりました。
個人的には裏技が使えなくなってしまったのが若干残念ではありますが、その代わり以前より使いやすくなったのも確かです。
Line 6リード・デモンストレーターSean Halleyのデモ
専用エディター”Workbench HD”
VariaxをPC上でカスタマイズ出来るソフトウェア“Workbench”も新しくなりました。
このソフトは、ギターのボディ・タイプやピックアップを組み替えたりして自分好みのモデルを作るものです。
ストラトのボディにセミアコ用のハムバッカーとレスポール・スペシャル用の”P90″ピックアップを載せたり、そのピックアップの位置や角度を変更したり、ゲインを調整して歪み具合を調整したり、というエディットが簡単に行えます。
ギターを弾きながらエディット出来るというのはかなり楽しいものです。
カスタマイズ好きの方ならこのエディターだけでしばらく遊べる事でしょう。
このソフトも無料でダウンロード出来ます。
エディットした自分だけのモデルは最大60種類までJTV本体に保存出来ます。
チューニングの自由度が更に幅広く
Workbenchでは各弦のピッチを変更する事が出来ます。
これは「実際の生音はレギュラーチューニングのままで、アンプから鳴る音を変則チューニングに瞬時に変えられる」ものです。
曲によって半音下げやドロップDに、更には曲の中でチューニングを変更するのも簡単です。
モデル毎にチューニングを指定して保存する、またはJTVの“オルタネート・チューニング・ノブ”に保存しておく事で、自分好みのチューニング設定を瞬時に呼び出せます。
また、以前のVariaxでは、3モデルのみ限定的に12弦の設定がありましたが、
Workbench HDでは全モデル12弦対応になりました。
レスポールやシタールを12弦仕様にするのも簡単です。
これまで以上にカスタマイズの自由度が高くなり、エディットする側の想像力を試されるほどに「遊べる」ものになりました。
P.S.
「12弦にしてハーモニクスを鳴らした時、複弦の挙動が不自然になる」という既知の問題は残念ながらまだ解消されていないようです。
今後のアップデートでの改善を期待します!
以上、『Variax HD』及び『Workbench HD』について紹介しました。
今まで以上に「使える」仕様になった今回のアップデートは本当に素晴らしいと思います。
是非この先進的なギターに触れてみてください!
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